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核廃棄物の処理は無理…!? [エネルギー]

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http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20111125/224281/?ST=rebuild
核のゴミは始末しきれない
「第2の六ヶ所」は本当に必要か
2011/11/29
市村 孝二巳

 本欄で7月から書き続けてきた、原子力の発電コストに関する議論が佳境に入ってきた。

 内閣府の国家戦略室を事務局とする「コスト等検証委員会」が、同じ内閣府の原子力委員会から「核燃料サイクルコスト、事故リスクコストの試算について」(見解)とする報告を受け、原発のコストに関する本格的な検討に入った。

 コスト等検証委員会は、化石燃料や再生可能エネルギーなどを含めた発電コストの比較について、12月中に同じ国家戦略室の「エネルギー・環境会議」に報告する。

 コスト等検証委員会の報告は、民主党政権が来年夏までにエネルギー基本計画の見直しを進めるうえでの大前提になる。野田佳彦政権が、脱原発政策を具体化していくための指針になる、ということだ。

 ここで知りたいのは、東京電力福島第1原子力発電所の事故を経て、原発のコストはどれだけ変化したのか、である。

 コスト等検証委員会が、原子力委員会に検討を依頼したのは、次の2点である。

 (1)原子力発電の核燃料サイクル費用

 原子力発電から生じる使用済核燃料の処理方法については、様々な方策が考えられるが、それらについて、最新動向などを踏まえ、その費用を算出する必要があります。

 (2)原子力発電の将来リスク対応費用

 東京電力福島第1原子力発電所の事故を踏まえ、賠償費用、除染費用、追加的な廃炉費用等が生じていることを念頭に、原子力発電が有する将来顕在化する可能性があるコストを算出する必要があります。

 この2つの依頼を受け、原子力委員会は、新たに「原子力発電・核燃料サイクル技術等検討小委員会」(座長:鈴木達治郎・原子力委員会委員長代理)を設け、4回の会合を経て原発コストを再検討し、11月10日に見解をまとめた。(1)の論点が下のグラフに示した、核燃料サイクルのコストである。

01.jpg

 このコラムの第1回、第2回で指摘したように、原発のコストについてはこれまで、2004年(平成16年)に電気事業連合会が試算し、経済産業省の総合資源エネルギー調査会・電気事業分科会コスト等検討小委員会に報告した「1キロワット時当たり5.3円」という試算が、あたかも金科玉条のように語り継がれ、「原発は安い」という根拠となってきた。

 しかし今回、改めて原発コストの試算が必要になったのは、福島第1原発事故の影響で、どれだけ原発が高くつくものになったかを検証する必要があるからだ。特に(2)は、これまで全く試算に織り込まれていなかった要素だが、今回は(1)について精査してみたい。

 原子力発電・核燃料サイクル技術等検討小委員会は、核燃料サイクルの方向性を3つのシナリオに場合分けしてコストを試算した。(1)は、使用済み核燃料をすべて再処理し、MOX(ウラン・プルトニウム混合酸化物)燃料を作ってリサイクルする「再処理モデル」、(3)は、使用済み核燃料を全く再処理せず、地中に埋設処分する「直接処分モデル」、そして2つの中間に位置する(2)が、使用済み核燃料の一部を20年後に再処理してリサイクルする一方、残りは50年間の中間貯蔵を経て再処理してリサイクルするという「現状モデル」――である。

 この試算を出すに当たり、小委員会では激しい議論が繰り返された。メンバーには、反原発の立場から伴英幸・原子力資料情報室共同代表が加わったほか、原発推進派に批判的な松村敏弘・東京大学社会科学研究所教授も名を連ねた。

 再処理モデルも、直接処分モデルも現実離れ

 今回の議論で明らかになったのは、(1)の再処理モデルも、(3)の直接処分モデルも、少なくとも現時点では、現実離れしたシナリオだということである。

 (1)の再処理モデルは、2004年の試算とほぼ同様に、5年間発電に使った核燃料を3年間かけて再処理し、1年間でMOX燃料に加工してリサイクルする、というのが前提だ。しかし、このモデルがすでに破綻していることは明白だ。

 最大の原因は、青森県六ヶ所村の使用済み核燃料再処理工場、MOX燃料工場がいまだ稼働していないことにある。このモデルは使用済み核燃料を3年間で再処理するのが前提になっている。しかし、再処理の最終段階で生ずる高レベル廃液を処理するガラス固化の工程がトラブル続きで、再処理工場が竣工目標を幾度となく先送りしてきたのは周知の事実だ。来年10月に再処理工場を竣工させる現在の目標も達成を危ぶまれている。

 再処理工場を運営する日本原燃によれば、全国の原発から集まり、六ヶ所村で貯蔵している使用済み核燃料の平均貯蔵期間は3年はおろか、平均13年にも達し、その量は約3000トンに達しているという。六ヶ所村の再処理工場が首尾よく稼働したとしても、再処理できるのは年間800トンに過ぎない。いまの貯蔵量を再処理するだけでも4年はかかるので、六ヶ所村に課せられた再処理の義務を果たすには少なくとも20年はかかる、というのである。

 一方、(3)の直接処分モデルも問題含みだ。発電に5年間使った後、54年間は中間貯蔵し、再処理もしないで埋設処分するというのが前提である。こうすれば、再処理費用が発生しないので、(1)や(2)よりは大幅に安く済むという試算だが、問題は最終処分場をどうするかが全く決まっていないことだ。

 (1)でも(2)でも、再処理・再利用を続けた結果として最終的に発生する高レベルの廃棄物を処分する場所は必要であり、(1)(2)(3)のいずれの選択肢を採るにしても、最終処分場は必要になる。今回はいずれの試算にも、その「コスト」は含まれていない。核のゴミを最終的に引き受けようという場所が存在しない限り、そのコストも計算しようがない、というのが実態だからだ。

 結局、今回の試算にも、計算しようのないコストは算入されていないのだ。

 かくして、原子力委員会が提示した3つのシナリオのうち、選択可能なのは(2)の現状モデルだけ、ということになる。多様な選択肢を示しているようでいて、実際には現実を受け入れるしかない、ということを強要しているのだろうか。

 (2)の現状モデルだと、核燃料サイクルのコストは1キロワット時当たり1.39円と、2004年の試算の1.47円よりも安くなるという。見解によると、2004年の試算時よりもウラン燃料のコストは上昇したものの、再処理までに要する期間を3年から20年に先延ばししたことによって、割引率で割り戻した現在価値が下がり、コストが低くなる、というのである。

 しかし、この試算には全く織り込まれていない、大きな「コスト」がある。

 「再処理工場をもう1つ作る」

 (2)の現状モデルは、原発で5年間使った使用済み核燃料を20年後に再処理してMOX燃料に加工して再利用する。しかし、今の六ヶ所の再処理工場の使用済み核燃料の処理能力は年間800トンであり、日本の原発で出てくる使用済み核燃料の約半分しか処理できないという問題がある。しかもさきほど指摘したように、六ヶ所には約3000トンの使用済み核燃料が堆積し、再処理の順番を待っている。この滞貨を処理するのに20年はかかるという。この現状モデルは、使用済み核燃料の一部を六ヶ所で再処理し、残りは40~50年間の中間貯蔵期間を経て、再処理・リサイクルに回すことを前提としている。

 さらに、その大前提となっているのは、もう1つ、六ヶ所村のような再処理工場を作るということだ。

 日本原燃が小委員会に提出した資料に示されていたのが、下の図である。

02.jpg

 この図によると、「第2再処理工場」では、六ヶ所で再処理しきれず、中間貯蔵していた使用済み核燃料に加え、使用済みのMOX燃料も再処理することになっている。

 さらに再処理の後は、「高速増殖炉用MOX燃料」を作ることにもなっている。「もんじゅ」用の燃料である。

 政府の行政刷新会議による政策仕分けが、トラブル続きの高速増殖炉「もんじゅ」について、存続の是非を含めて見直すという方針を示したが、いわゆる「原子力ムラ」は、もんじゅを含めた「無限のリサイクル」を全く諦めてはいないということも、今さらながらにはっきりした。原子力ムラの住民たちは福島原発事故を経てなお、自己保存本能を旺盛に発揮しているという事実が白日の下にさらされたのである。

 核燃料サイクルは何を目指しているのか

 その1つの証拠として、原子力委員会の議論が紛糾し、近藤駿介委員長(東京大学名誉教授)が総括に苦慮した事例を挙げたい。

 くだんの小委員会が検討結果を報告した11月10日の原子力委員会臨時会議では、非常勤委員であり、東京電力顧問である尾本彰委員は、小委の報告のうち、「留意事項」について繰り返し修正を求めた。

 「サイクルというのはいったい何を目指しているのか。(中略)いまあるサイクルを元にして将来のサイクルについての政治的決断をするのはちょいとおかしいんじゃないですか」

 要するに、今回の試算は高速増殖炉を欠き、通常の原発でMOX燃料を使うプルサーマル路線を前提にしているが、本来は高速増殖炉もんじゅを含むような核燃料サイクルを企図しているのに、将来にわたって、プルサーマルしか認めないかのような現状モデルには批判的である、という強い意思表明であった。

 結果として、尾本委員の意向が見解に反映されることはなかった。この背景には、電力中央研究所出身ではありながら、きわめて中立的な議事運営に努めている鈴木座長(原子力委員会委員長代理)と、その意思を尊重している近藤委員長の存在がある。

 とはいえ、尾本委員の事例や日本原燃の資料にみられたように、原発関係者がもんじゅを含む核燃料サイクルを決して諦めてはいないことも事実だ。

 今回の原発コスト試算には、彼らが必要としている第2再処理工場のコストや、中間貯蔵、最終貯蔵の用地選びに関するコストなどはほとんど含まれていない。それはあまりにも想定が現実離れしているからコストを計算できないからなのだが、その結果として原発のコストが過小評価されている可能性がある。仮に第2の六ヶ所再処理工場を作ろうとした場合、日本中のどの町がそれを受け入れるというのか。核燃料サイクル事業が存続する前提は、あまりにも不確実性が大きすぎる。

【著者プロフィール】
市村 孝二巳(いちむら・たかふみ)
日経ビジネス副編集長 兼 編集委員。
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 使用済み核燃料の処理は、普通に考えると経済的にペイしないようです。

 なのに、なぜ、こんな馬鹿げたことを続けるのか?

 それは、コストをかけるほど電気料金を高くできる仕組みになっているからです。

 原子力発電所の建設コストも、同じ出力の火力発電所の四倍以上かかるそうです。

 これも、コストが高いほど、電気料金を高くでき、電力会社にとって利益額が増える仕組みなのですから、安価な火力発電所を建てたくないのです。

 おなじ電力量を供給するのであれば、火力発電所を建設したり、環境負荷の少ない小規模水力発電所を建設したほうがよいのです。でも、それは発電コストを下げて、電気料金の引き下げにつながるからしないと思います。

 高いコストのほうが、料金を高く設定でき、利益が多くなる仕組みがどう考えても間違っているのです。

 これを是正するには、法律の改正が必要です。

 しかし、政治家や役人が、政治献金や天下りで、高い電気料金の恩恵を受けているのが現実なのです。

 この状況が是正されることは、いまのところ期待できそうにありません。

 使用済み核燃料は始末しきれないとしたら、できるだけ早く、いま運転している原発も停止して、使用済み核燃料をこれ以上増やさないほうが良いのです。

 発電コストが安いほど、電力会社の利益が多くなるような仕組みにすれば、原発なんてあっという間に消え去ると思うのですが…

(by 心如)

・・・

【おまけ】

◎褒美の品
 旅人が森を歩いていた時、王宮から逃げた金色の鳥を偶然見つけた。旅人はその鳥を捕まえて王宮まで持って行くことにした。
 王宮までくると門番が言った。
「その鳥を返したら王様が褒美をいっぱい下さるだろう。もし、この門を開けて欲しかったら、その褒美の半分を俺にくれ」
 旅人は仕方なく頷いた。
 王宮の中を歩いていると、今度は一人の兵隊がやってきて言った。
「その鳥を返したら王様が褒美をいっぱい下さるだろう。もし、王様の部屋まで案内して欲しかったら、その褒美の半分を俺にくれ」
 旅人は仕方なく頷いた。
 王様は、旅人が持ってきた鳥を見てとても喜んだ。
「どんな物でも褒美にとらすから何でも言ってみろ」
 旅人は困った。お金や食べ物をもらっても、それらはすべて門番と兵隊に取られてしまう。旅人は、しばらく考えた後にこう言った。
「私に褒美として、鞭打ち百回をください」

・・・


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コメント 2

shira

 1960年代に公害病を引き起こした元凶である有機水銀やカドミウムなどの化学物質については、海洋投棄されてもいずれ希釈されて分解されて害は弱まると主張されました(その主張に学者が絡んでいたのはもちろんのことです)。しかし実際には食物連鎖によって濃縮され人間の口に入り病気を引き起こしました。
 病原菌やウイルスやガンに対して対抗策を見つけた人類ですが、今もって放射能に打ち勝つ方策は持っていません。今のところ放射能に対しては「逃げる」以外の方法がありません。そういう怖い敵を相手にしているという姿勢は、電力会社にも学会にも政治にも感じられません。
by shira (2011-12-14 20:29) 

心如

shiraさん、コメントを頂き有り難うございます
 放射能自体はそんなに恐れることもないのかも知れません。広島や長崎の復興をみれば、人間はそんなに弱い生き物ではないと感じます。
 でも、わざわざ危なくてコストが高くならざるを得ない発電方法を選ぶ理由が、原発利権で金儲けをするためだというのが許せないと思うのですが…
by 心如 (2011-12-14 20:39) 

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