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学校教育を破壊したのは誰か? [教育]

 別記事で、いま現在の日本の学校教育には、構造的問題が潜んでいるのでないかということを取り上げました。
 『学校教育の構造的問題!?(その壱)
 『学校教育の構造的問題!?(その弐)
 『学校教育の構造的問題!?(その参)
 『学校教育の構造的問題!?(その四)
 『学校教育の構造的問題!?(その伍)

 一番の問題は、現場で働いている教員はそのことに気づいているが、それを改善する気力を失っているのではないかと感じることです。

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 落ちこぼれ製造工場

 日本の学校は、昔から現在のように荒廃していたのではありません。義務教育世界一と高い評価を得て、世界中から多くの視察者が来ていました。かつては、五十人近い子供達を一人の教員が教え、それでも高い学力を身に付けさせていたのです。子供達一人一人の能力を引き出し、高い学力を獲得させることに成功していたため、学力差の小さいことが日本教育の特徴とも言われていました。

 戦後初期の教員は、保護者や子供への責任を強く感じて指導に取り組み、一人一人にしっかりと学力を身に付けさせました。親が教員を頼りにし、教員もその期待に応える努力をしたのです。心配する親に「大丈夫ですから任せてください」と話し、子供を励ましながら指導していました。

 教員は、多人数の子供達を効率的に指導するため、教材研究や指導法の研修に熱心に取り組みました。子供達を引きつける教材の選定、学習課題の与え方、学習訓練の方法、力がつく練習問題づくり、分りやすい板書などに緻密な研究を重ねて、一人一人を深い学習に導く質の高い授業づくりを行いました。

 自民党や文科省は、日教組批判や教員批判を繰り返してきましたが、その間、学校では優れた教育を実現し、世界一の子供を育てていました。学力が下がったのは、「ゆとり教育」などの改革を強引に行ってからのことです。


 ■「ゆとり教育」という名の詰め込み教育

 壊れた教育システムの姿を知ることは、難しいことではありません。出鱈目に改造され、見事に破綻した教育のあり様は、学校の時間割を見れば一目瞭然です。

 中学校二、三年生は、週二十八時間の授業で、国語、数学、社会(歴史、地理)、理科、英語、音楽、美術、技術・家庭、体育、道徳、学級活動、総合的な学習の時間、更に選択教科が三科目程度、合わせて十五科目以上の学習をしていました。さらに、学校行事や部活動、生徒会活動まで行わせています。

 授業は、教員が手分けして間に合わせることも出来るでしょう。しかし、生徒は、これだけの学習に、集中して取り組めるでしょうか。このように細切れの学習を行うことによって、どのような能力が身に付くというのでしょうか。

 教師は指導計画も定まらずに授業を行い、生徒は前回の授業を思い出すこともできず、言われるままに時間を過ごすだけです。あまりにも馬鹿げたカリキュラムです。

 小学校五、六年生は週二十七時間の中で、国語、算数、社会、理科、音楽、図工、体育、道徳、学級活動、総合的な学習の時間、クラブ・委員会と十科目以上の学習を行います。更に、英語の授業も加わります。

 中学校よりは少ないのですが、ほとんどを一人の教員が教えます。全部の教科の授業計画を練り、準備をし、一人一人の学習に目配りして適切に指導するなど、スーパーマンでも不可能です。
 
無理な指導を求めることは、教員に「手抜き授業を行え」と言っていることと同じです。そのため、少ない教科学習の時間を業者テストや問題集で潰し、ドッヂボールやサッカーで息抜きさせる安易な指導ばかり行われるのです。

 「ゆとり教育」の改革は、ベルトコンベアーの速度を上げた上に一人の作業量を多くして、欠陥品や未完成品ばかり作る欠陥工場と同じ状況を学校に作ったと言えます。授業時間の削減は、作業時間の短縮を意味しますから、十分に身につかない者が出るのは当然です。新しい教科などを入れたことは、一人の工員の作業量を増やすことと同じですから、粗雑な授業が行われるようになります。少ない授業時間に多くの教科を詰め込んだため、教師も生徒も手に負えない破綻カリキュラムなってしまったのです。

 教育とは、授業をすることでも、講義をすることでもありません。読み書き計算の課題に取り組むことは、学習です。その学習課題に取り組ませ、乗り越えさせて、自信や意欲を育てることが教育です。
 教員は、学習に取り組ませたなら、成果を上げ、自信や意欲が生まれるまで指導しなければなりません。不充分な学習をさせて無力感や劣等感を与えることは、子供を虐待していることと同じです。自信を育てない学習指導は、教育ではありません。

 文科省による教育政策の大失敗は、学習指導要領の改訂を重ねて、教育の出来ないカリキュラムを作ってしまったことです。それを法律化して実行を強制したことが、教育衰退と腐敗の原因です。教育改革の議論が、あまりにも未熟なのです。

 ■官僚の思いつき改革と教育荒廃

 更に驚くべきは、教科を増やしたり教育内容を変更したりしても、教員への必要な説明や研修をほとんど行っていないことです。

 新しい教科等を作れば、事前に十分な研修を行い、目的や価値、教育内容を理解させ、指導方法を訓練があるのは当然です。授業時間が短くなれば、それに対応した授業計画づくりや効率的な指導技術を学ぶ必要があります。

 新しい作業システムを導入する時には、細部にわたって準備し訓練しなければ、非効率になって欠陥品ばかりが作られる結果になることは、職業経験がある者なら誰でも分かることでしょう。

 ところが、新しい指導要領になっても、教員に十分な説明もせず、授業の研修も全く行っていません。教員は、四月一日に担当が決まり一週間後には授業を始めなければなりませんが、全く事前説明も受けず十分な研修もせずに、新しい授業を作り出さなければならないのです。

 しかし、目的を理解できず必要と思わない授業を行う場合でも、教員は、無意味な学習であるとも指導方法が分からないとも言えません。言えば、親の信頼も子供の信用も失ってしまうからです。

 そのため、教科書や学習指導要領を見ながら、間に合わせの授業作りを行うのです。

 智恵を絞って、それらしい活動や授業を作り出して取り繕います。それは、未熟な作業員が、見よう見まねで製品作りをしているようなものです。価値ある活動である場合もありますが、時間潰しであることが多いのです。

 「総合的な学習の時間」は、その典型です。目的や価値の理解が、教員によって全く違います。文科省官僚から説明を受けた者さえ、理解がそれぞれに違っています。設置して十年経っても、「総合的な学習の時間」の目的を、誰も説明できないのです。

 学校毎に活動計画が違うのではなく、教員によって目的も活動も全く違っています。多くの授業活動を割いて活動させている教員もいますが、ほとんど成実も行っていない者までいます。教育活動の体をなしていないものも少なくありません。「どのような目的で活動しているのかですか」と聞けば、それらしい返答はありますが、その活動の多くは、目的と無関係であり、適切な活動でもありません。

 これが、誰も話さない教育改革の実態です。

 日本の教育改革の異常さは、十分な研究も準備もせずに教育内容を変えて、教育荒廃を作り出していることです。教育改革と叫びながら、教員の授業づくりや子供達の学習を考慮することなく、授業内容や授業時間を安易に増やしたり減らしたりして、「教育できない学校」を作りだしてしまいました。

 学習指導要領を作る者に教員の経験があれば、現在のような馬鹿げたカリキュラムを作ることはありません。また、十分な研修もせずに指導させるような無責任なことは、子供達のためにも行えません。教育に十分な経験も理解もない人達が、安易な思いつきで改革を重ねたため、驚くべき欠陥教育になってしまったことは明らかです。

 学校や教員は破綻した教育の体裁を繕っていますが、そのしわ寄せは、すべて子供に行きます。薬害肝炎や年金記録問題と同じに、信じられないような無責任と腐敗が、教育行政にもあるのです。
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 引用した文章を読むと、学習指導要領を作る者に、教員の経験が無いとのことです。また、実際の教育現場に対する理解も不充分だと言わざるを得ません。
 教員の経験が無く、教育現場に対する充分な理解も無い者が、何を何時間で教えるといったことを思いつきで決めているのが本当だとしたら… それに振り回される教育現場の教師と児童・生徒はたまったものではないと思います。

 教員はなぜそれを教えるのかという理由が説明できない。どう教えるのかという研修も受けていない。仕方なく、教員ごとに勝手に解釈し、間に合わせの授業を行わざるを得ない。これが、いま現在の日本の学校教育の実態なのでしょうか。

 教育の目的は、日本の将来を支える人的資源を育成することだと思います。その大切な教育を破壊したのが文科省の役人なのだとしたら… あまりにも馬鹿げていると言わざるを得ません。

 教育改革と称して安易な思い付きで学習指導要領をいじる前に、教師が落ち着いて児童・生徒を指導できる環境作りをして欲しい。児童・生徒ひとりひとりに、自信と意欲を与える教育を取り戻さなければ、日本の将来が危ういと言わざるを得ない状況ではないかと私は思います。

 文科省は、一度解体して出直すべきなのかも知れません。

(by 心如)

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