SSブログ

TSUNE氏のコメントに対する返事(其の弐) [科学]

帽子.JPG 

過去記事に、TSUNE氏より下記のコメントを頂戴しましたので、お返事を別記事とさせて頂きます。

―――――
心如さん

大気の気温減率は「高度が上がるにつれて気温が下がる割合」です。これを「高度が下がると気温が上がる」と考えてしまうとおかしなことになります。

心如さんが書かれているように、平板大気モデルでは、大気がない場合に地表温度は -18℃になります。

じっさいの大気と同じ質量で、太陽放射や赤外線を吸収する気体や物質をまったく含まない大気を想定し、伝導や対流や潜熱を無視すれば、地表の気温は -18℃で、高度12kmの対流圏界面の気温は -84℃になります。気温減率は100mあたり0.55℃です。この場合、大気からの放射はゼロなので、地表面から宇宙への放射と地表面が太陽から受け取る放射が吊り合うことになります。

ここで、地表気温が15℃、高度12kmの対流圏界面で -51℃の大気があるとします。気温減率は100mあたり0.55℃です。この場合には、地表面からの放射は、7割がたが大気に吸収されています。地球から宇宙に放射されているのは3割がたが地表面からの放射で、7割がたが大気からの放射です。これらが太陽から受け取る放射と吊り合うことになります。

問題は、伝導や対流や潜熱を無視して、放射だけの計算が現実の気温を再現するのか?ということです。じっさいに計算してみると地表気温がうんと高くなって合いません。そこで現実の温度勾配を再現するようにギャップ調整を加えます。これをモデラーは「対流調節」と呼んでいます。そうしてつくったモデルに、大気の吸収率を変えて求めたのが、温室効果による気温上昇値です。

このようにして求めた気温上昇について、懐疑的な学者は、ほんらい大気には、温度分布を定常状態に向かわせる対流活動がつねに働いており、モデルの予測値は過大である、というものです。
by TSUNE (2011-12-04 16:25)
―――――

>心如さんが書かれているように、
>平板大気モデルでは、大気がない場合に地表温度は -18℃になります。

 「平板大気モデルでは」という専門用語が出てきますが、そういう前提は要らないと私は思います。
 あくまで、太陽放射と地球のアルベド(反射能)だけで計算した場合に、地表の平均温度が-18℃になるのです。
 大気がある場合は、地表の平均気温は、大気の厚みによる昇温作用があるので、温室効果の有無とは無関係に、-18℃とはならないのです。

>じっさいの大気と同じ質量で、
>太陽放射や赤外線を吸収する気体や物質をまったく含まない大気を想定し、
>伝導や対流や潜熱を無視すれば、
>地表の気温は -18℃で、
>高度12kmの対流圏界面の気温は -84℃になります。
>気温減率は100mあたり0.55℃です。
>この場合、大気からの放射はゼロなので、
>地表面から宇宙への放射と地表面が太陽から受け取る放射が吊り合うことになります。

 これは、TSUNEさんらしくない間違いをしていますね。

 実際の大気と同じ質量で、太陽放射や赤外線を吸収する物質をまったく含まず、伝導や対流や潜熱を無視したら、地表の温度(地面の温度)は-18℃になるかもしれません。なぜなら、熱の収支にまったく大気が関与しないという特殊な大気を想定すれば、大気が無い場合の地表の平均温度と同じ結果になると考えるのが妥当なのは議論の余地がありません。

 しかし、その場合に、高度1.5mの空気の温度は何度になるのかは予測不可能です。だって、伝導も対流も潜熱も無視し、地表からの赤外線や太陽光も一切吸収しない大気の温度は、地面の温度の影響を全く受けません。影響が全く無いのに、高度1.5mの空気が地面と同じ温度になるという保証は誰にも出来ないと思います。

 それともう一つ、潜熱を無視できるということは、大気中に水蒸気は存在しないとことを意味します。大気に水蒸気を含まない(潜熱の影響を受けない)場合の乾燥断熱減率は、100メートルにつき約1度です。地表の空気の温度が-18℃だとしたら、高度12000メートルの空気の温度は、-138℃に計算上はなります。
 潜熱は無視できるとすると言いながら、気温減率に湿潤断熱減率を持ち出すのはおかしいと、私は思います。

(by 心如)
 


nice!(5)  コメント(4)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 5

コメント 4

TSUNE

心如さん

わざわざ「平板大気モデル」と言ったのは、このモデルの地球は「丸くない」からです。ご存知のように、地球表面の熱収支は、赤道付近では放出よりも吸収のほうがずっと大きく、極付近では吸収よりも放出のほうがずっと大きい。地球では、低緯度の熱が高緯度へ運ばれて放熱されてるわけです。この輸送が滞ったり活発になると(大気循環や海流が変動すると)気候が変動する。

平板大気モデルは、こうした「熱の移動」を無視したモデルなわけです。大気循環や海流だけでなく、熱の伝導も、水の潜熱も無視して、放射のみで考えたのが、平板大気モデルです。

潜熱を無視するという条件で湿潤断熱減率を適用したのは僕のミスでした。すみません。太陽放射や赤外線を吸収する物質をまったく含まず、伝導や対流や潜熱を無視すれば、地表の気温は -18℃、高度12000メートルの気温は -138℃という計算になります。

赤外線が光として見えるカメラで地球を見たら、輝く大気の底にうっすらと光る地表面(海面)が見えるはずです。7割が大気から発した光で、3割が地表面(海面)から発した光。その光の強さは、平均して -18℃の黒体放射に相当する強さです。じつは地表面からは平均して15℃の黒体放射が出ているのですが、その7割は大気に吸収されてしまい、宇宙まで届かないのです。
by TSUNE (2011-12-04 21:38) 

心如

TSUNEさん、コメントを頂き有り難うございます
>わざわざ「平板大気モデル」と言ったのは、このモデルの地球は「丸くない」からです。

 でも、地球を球とみなして、太陽放射の値を地表の受ける平均値(円の面積を球の面積で割った値)にして計算していると思います。「丸く」ないというのは別の誤解を生じます。
 あくまで、太陽放射と地球のアルベド(反射能)だけで計算した地表の平均温度は-18℃だと明記しております。
 これは、大気や海洋の熱の移動も入ってないという意味で通じないのでしょか?

 また、伝導や対流、潜熱が無くて、赤外線の吸収もないということは、地表の熱は大気にまったく影響しないという意味なので、地表に接触した大気は地表の温度にまったく関係がないということになります。
 その場合に、地表の空気が何度になるかは予測不可能です。勝手に地面と同じ温度になると決め付けるのはおかしいと言わざるを得ませんが…
by 心如 (2011-12-04 23:05) 

TSUNE

心如さん

僕は「地球は丸い」ことが重要だと考えています。丸いから高緯度と低緯度の間で温度差と気圧差が生じ、これが大気循環や海流を生じさせている。地球の気候は動的に捉えなければ理解できないと考えています。平板大気モデルはあくまで静的なモデルです。

伝導や対流、潜熱が無くて、赤外線の吸収もない大気というのはあくまで想定であって、現実にはあり得ないですね。

地球の気候が穏やかなのは、ひとえに海洋があるためです。大量の水があり、水蒸気があり、雲があることが、地球の気候を決定づけていると言って過言ではないと思います。二酸化炭素の温室効果の寄与はかなり限定的だと思っています。
by TSUNE (2011-12-05 01:05) 

心如

TSUNEさん、再度、コメントを頂き有り難うございます
 地表の平均温度が-18℃になるのは、大気も海洋もない場合の理論値であり、実際の地球には大気と海洋がありますので、当然、実際の地表の平均温度は理論値にはなりません。
 海洋があることは、空気にくらべて水の温まり難く冷め難いという性質が、日較差や年較差を小さくする作用があることは事実だと思います。また、地表の七割は海です。陸地には植物が生えている場所も多いです。このことにより、地表の熱エネルギーを大気の上部に運ぶのは主に水蒸気であることも事実です。
 ただ、年間の平均気温という観点で見た場合、日較差や年較差を小さくする作用はあまり重要な意味を持ちません(あくまで年間平均気温の計算に関してであって、生物が暮らしやすいかどうかという観点でみれば、海洋の果たす役割はものすごく重要です。誤解のないように…)。
 問題なのは、地表の熱を大気の上空に運ぶのは水蒸気の役割が大きくて、赤外線の放射はそんなに大きな割合ではないという点です。
 なのに、潜熱を無視して計算するなんて、どういう根拠で、そんな馬鹿なことをしているのか理解に苦しみます。
by 心如 (2011-12-05 19:39) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。