実用可能な風力(陸上)は、原発12基分…!? [エネルギー]
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http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1105/19/news008_2.html
立ち上がる風力発電(1):
現実的に見ても大きな可能性を秘める「風力発電」
再生可能エネルギーの主力として注目される風力発電。
その可能性をシリーズで探っていく。
第1回は、風力発電の導入ポテンシャルについて解説する。
世界で風力は原発を上回るエネルギーへ
自然エネルギー(再生可能エネルギー)が世界的にすごい勢いで伸びている。その中心的な存在が「風力」だ。
国際エネルギー機関(IEA)が発表した2011年版「Clean Energy Progress Report」によれば、世界の風力発電の設備容量は2010年で195GW、それが2020年には3倍の575GWまで増える見通しだ(1GWは100万kW、標準的な原発1基の出力容量に相当)。これに対して太陽光発電は成長率こそ風力を上回るが、2020年でも126GWにとどまる。また、原子力は福島の事故を勘案していない見通しでも、2010年の430GWが2020年に512GWと低成長だ。つまり、世界的には向こう10年で、風力が設備容量で原子力を上回る電源となるわけだ(実際の発電量は設備稼働率による。詳しくは後述)。
【中略】
現実的に見れば陸上風力で原発何基分?
前述した導入ポテンシャルが高い3地域は、陸上風力・FIT単独シナリオだけで最大、北海道62.4GW、東北39.4GW、九州11.7GWとなる。これに対して電力会社の発電設備容量は、北海道7.4GW、東北16.6GW、九州20GWでしかない。つまり、北海道などは、今ある発電設備容量の8倍強もの導入ポテンシャルがある。これが全て開発されるとは到底考えられない。北海道で余った電力を本州に融通すると言っても、連携設備能力は0.6GWでしかない(今回の大震災で地域間連携設備能力の低さは問題視されている)。
斉藤氏は「各地域で電力会社の設備容量を上限とすれば、陸上風力・FIT単独シナリオの導入ポテンシャルは最大でも60GW程度。そのうち、実際に開発可能なのは、半分の30GW程度ではないか」と指摘する。
日本版FITの法案では、太陽光を除く電源の場合、買取価格は15~20円/kW、買取期間は15~20年の範囲で決めるとしている。「FITの制度設計によって風力発電事業の採算性は変わる。買い取りの価格・期間が厳しく設定されると、事業者は平均風速や初期コストなどでより条件の良い地区を選ばなければならず、導入ポテンシャルは減る」(斉藤氏)。ちなみにJWPAは「風力発電の拡大には20~24円/kWh・20年が必要」と主張している(ちなみに現行のRPS法+補助金は16円/kWh・17年に相当するとしている)。
ともあれ、FIT単独シナリオで導入される陸上風力の設備容量を30GWとしてみる。後は稼働率をどう見るかだが、仮に導入ポテンシャル調査で使われる最も低い推計条件「平均風速6.5m/sで理論設備利用率27.5%」を適用すると、年間発電量は7万2300GWh/年となる。一方、原発の平均稼働率は67%(10年度実績)なので、標準的な原発1基の年間発電量は5900GWh/年。つまり、陸上風力の発電量はおよそ原発12基分となる。
メディアで言いはやされた「東北だけで原発40基分」と比べれば、全国で原発12基分は少ないように見えるが、それでも国内電力需要の8%をまかなえる計算になる。決して小さくないだろう。また、FITの制度設計、技術革新や補助金制度によっては、上乗せも期待できる。
洋上風力発電の導入ポテンシャルは「未知数」
さらに、以上は陸上風力発電に限った話である。導入ポテンシャルが陸上風力の5.7倍もあるとされる洋上風力発電はカウントしていない。洋上風力ならば、陸上風力に適さない東京電力管内でも導入が見込める。
斉藤氏は「欧州では導入が始まった洋上風力だが、国内ではまだ実証実験の段階。技術、ノウハウが蓄積されておらず、制度も未整備なので、現実的な導入ポテンシャルは未知なところがある」と話す。実際、導入ポテンシャル調査でも、FIT単独シナリオでは3GWと小さく、技術革新、補助金を伴って大きな導入ポテンシャルとなる。逆に言えば、技術革新の余地が大きく、政策次第とも言える。洋上風力については、シリーズの別の回で取り上げる。
風車は原始的なイメージもあるが、「中身は2万点の部品で構成され、日本が得意とする機械部品の集積」(斉藤氏)という。エネルギー産業、機械産業の面でも大いなる可能性を秘めた風力発電は注目に値するだろう。
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引用した記事を読んで、感じたことをまとめておきます。
まず、日本の国土で、開発可能は風力は30GW(3000万kW)あるが、風力の設備利用率27.5%を適用すると、年間発電量は7万2300GWhになるそうです(計算すると、72,270GWhです)。原発一基の年間発電量が5900GWhだというのが正しいとすると、12.249基分という計算になりますので、約12基分と言ってよいと思います。
日本の国土(陸上)で、開発可能な風力が原発12基分くらいあるというのは事実だろうと思います。しかし、それは出力3000kWの大型風力発電施設で計算しても、10000基分に相当します。
原発12基分の電力を発電するのに、10000基の大型風力発電施設が必要になるのです。そして、その稼働率が27.5%しかないという点も問題があると思います。太陽光発電に比べたら、風さえ吹けば、夜間の発電も可能です。しかし、風が吹かなければ、電力を供給できないというのも事実です。反対に台風がきたら、風が強すぎて発電できないのではないかと思います。
これでは、年間の発電量が原発12基分に相当する計算だというだけです。必要なときに必要な量の電力が、発電できないと実用的には困るのです。
太陽光発電と風力発電は、いくら発電設備の容量を増やしても、必要なときに必要な量の電力が発電できるとは限らないという致命的な問題があるのです。
一旦、蓄電池に充電しておいて、必要なときに取り出して使えばよいという話も聞きます。でも、電気は、発電機の交流を整流して直流にしないと蓄電池に充電できません。蓄電池に蓄えられた電気(直流)を、送電線(交流)に直接接続することは出来ませんから、蓄えた電力を使用する場合は、直流を交流に変換しないといけません。電気は、交流から直流に整流、電池に充電、電池から放電、直流から交流に変換、それぞれの段階でロスを生じます。また、それぞれに使用する装置のコストも余分に必要になります。
いま現在の技術で考えると、余った電気を一旦蓄えておいて、必要なときに取り出して使うよりも、必要なときに必要な量を発電するほうが効率が良いし、余分な装置も不要なのです。
日本に開発可能な風力(陸上)が、原発12基分あるというのは事実だとしても、原発12基のほうが、電力の安定供給という面では頼りになるというのも事実なのです。
当面の原発の代替は天然ガス複合サイクル発電によって賄い、中長期的には小規模水力発電や地熱発電を開発するほうが、電力の安定供給には有効だろうと私は思います。
(by 心如)
米国ではいろんな種類の発電が試されて実用されている
日本はそんな所の長短を見習うべきでしょうね
by 大将 (2012-02-04 20:13)
大将さん、コメントを頂き有り難うございます
米国のような広大な国土と、豊かな地下資源があれば、食糧問題やエネルギー問題なんて気にしないでよいのも事実なのですが…
by 心如 (2012-02-04 20:24)