無責任だと思うが…!? [政治]
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『日本を愛すればこそ、警鐘を鳴らす」―論戦2010
(櫻井よしこ/ダイヤモンド社)
2010年6月17日 第1刷発行
第二章 民主党政権に国政が担えるのか
温室効果ガス25%削減で
国民はいくら負担するのか
日本時間の2009年9月22日夜、鳩山由紀夫首相はニューヨークの国連本部で開かれた国連気候変動首脳会合の開会式で演説した。2020年までに温室効果ガスの排出量を1990年比で25%削減するという中期目標を表明した。
目標値達成は、すべての主要国の参加による意欲的な目標の合意が前提となるとの条件をつけたうえで、「鳩山イニシアチブ」として、途上国や島嶼国に対する無償の資金・技術援助計画もうたい上げた。
国際社会への“華々しい”デビューを果たした後、鳩山首相は高揚した表情で「なかなかおもしろかった」「あれだけお誓いしたのだから、しっかりやらなければならない」と語ったが、私は25%という途方もない数字の一人歩きを強く危惧するものだ。
国際公約になった25%削減策に、国民は高い指示を与えている。メディアの報じ方は、テレビ朝日の「報道ステーション」のように、前のめりといってよい熱心な賛成派から、日本のひとり相撲になるべきでないという意見まで、大別すると二分される。だが、90年比25%の削減は05年比換算で30%である。どの国も打ち出してはいない大胆な目標であり、それが日本全体の利益につながるのか、はたまた国際社会の環境問題改善にどれだけ貢献するのかは保証の限りではないのである。
同案をまとめた福山哲郎外務副大臣は、副大臣就任前の取材で、「画期的な目標を掲げ、21世紀の環境政策をリードすることが、日本の活路を開く」と熱心に語った。
たしかにそのとおりだ。だがそれも国民と企業の、理解と支持があってこそ可能である。
にもかかわらず、前代未聞のこと削減幅がどれほどの負担を伴うものかについて、民主党はほとんど説明していない。少なくとも麻生太郎前首相は、自民・公明案の05年比15%の削減を実現するには、62兆円の投資が必要だという見通しや、一世帯当たり7万6000円の負担増になるなど、必要最小限のことは説明した。民主党は、マニフェストには25%削減と書き込んだが、25%の削減を国内で行なうのか国外から排出枠を購入するのか、その場合、税で負担するのか企業負担とするのかも明らかにしていない。
鳩山首相の大胆な「お誓い」とは対照的に、米中両国は一切の数字を口にしなかった。それどころか、中国は先進国の責任を強調した。地球全体で排出する二酸化炭素の約45%を占める米中両国はさぞかし、日本を与しやすしと見たであろう。
地球全体の4%しか排出していない日本は、高度の省エネ技術をつくり出し、実践してきた。日本がもう25%、つまり世界全体の枠組みの中で見れば1%にすぎない量のCO2を削減するのにかかる費用と、米国や中国が同じ分量を削減するのに必要な費用はまったく同じではない。高い水準を達した国がさらに高い水準を目指すには、幾何学的にコストが上昇するのは、常識である。
鳩山首相にはぜひ、この限界削減費用、追加的に一単位削減するための費用に留意してほしい。ちなみに限界削減費用というのは、東京大学先端科学技術センター特任教授の山口光恒氏の「ECOマネジメント」の中での説明を拝借すれば、「それまでの時点でそれより削減費用が安い対策や技術はすべて導入しているとの前提に立ったうえで、さらに追加的に温室効果ガスを一単位削減するための費用」である。
麻生前首相は、当初、05年比で14%削減を考えていたが、1%を加えただけで、さらに10兆円のコストがかかると説明した。麻生案を基準にしても、日本と欧米の限界削減費用は三対一、つまり、日本で一単位削るには欧米の三倍のコストがかかることが明らかにされている。中国、インド、ロシアなどと比べれば、さらに差は開く。
麻生案よりさらに高い数値を目指す鳩山案実現にかかる費用については、多くの研究機関がシミュレーションの範囲を超えていると断ずる。あまりに膨大な額になるということだろう。こうしたことについて、民主党は国民と経済界に、きちんと説明する責任がある。
(『週刊ダイヤモンド』2009年10月3日号)
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『25%削減する話はどうなったのか…!?』という記事で、1990年比で25%削減する費用は190兆円だと書きました。
でも、この本の記述をみると、05年比で15%削減する費用は62兆円だと書かれています。
1990年比で25%削減は、05年比換算で30%の削減に相当するというのが正しいとすると、麻生案に比べ鳩山案は二倍の削減目標となります。
幾何学的に費用が増大するというのも正しいとすれば、二倍の削減に必要な費用は四倍以上となります。62兆円の四倍以上となると、約250兆円になる計算です。
日本の二酸化炭素排出量を、05年比で30%削減するには、約250兆円もの巨額の費用が必要となるのです。東日本大震災の復興費の10~20兆円すら、増税しないと駄目だという話になっているのです。250兆円の費用をどこから出すのでしょうか?
ちなみに、250兆円というと、国民一人当たり(1億2700万人)で計算すると約197万円になります。赤ん坊から老人まで、一人当たり197万円の負担になるという説明を、民主党は国民に一切していないと思いますが…
1990年比で25%の削減を支持している人に、国民一人当たり197万円の負担が必要になると理解している方が、いったいどれだけいるのだろうか。
こういうことを、きちんと国民に説明しないのは、あまりにも無責任だと思います。
そのうえ、日本の二酸化炭素排出量をたとえゼロにしても、温暖化防止効果はまったく期待できないのです。国民を愚弄するのもいい加減にしろと言いたい。。。
(BY 心如)
【おまけ】
実家の家紋です。「藤輪に橘」というらしいのですが、この家紋を使っている人はあまりいないみたいです ^^;
◎結婚の決め手
ある二人の会話。
「君が結婚したいって言っていた子だけど、どうなった? 結婚できそうかい」
「いや、無理だった」
「どうして? 君の親父さんの莫大な財産について話さなかったのかい」
「話したさ。それであの子は親父と結婚したんだ」
どこの政党と言うよりも
まず政治家たちが同じ方向を見てほしいです
民主党も間違えをただす勇気を持ってほしいし
自民党もそろそろ足の引っ張り合いではなく
永い政権を持った経験から民主党にこうするべきと言う事を
大人の話し合いとしてしてほしいです
by 大将 (2011-11-03 12:13)
大将さん、コメントを頂きありがとうございます
政治家は、カネになるか、票になるかでしか判断しません。一番大切な、国民の生命、財産を守るという使命を忘れているのです。日本を自滅の道から救うには、自分の目先の利益しか考えていない政治家をなんとかしないと無理です。でも、その方法がないのも事実かな…
by 心如 (2011-11-03 13:42)
最後のジョーク話が気に入りました。
by shira (2011-11-03 18:15)
実際は日本の景気が減速し、工場も海外移転しています。ですから現在の日本の二酸化炭素排出量を計算しなおし、これからの自然減(今までのようには絶対増えていかない)を推測してからの再検討で十分では。それにもとより温暖化に本当になっているか?と言う疑問もあることだし。さすが民主党やマスコミは的外れ。それより景気を何とかしないと本当に明日はギリシャに。
by taro-u (2011-11-03 19:40)
shiraさん、コメントを頂きありがとうございます
ありそうな話ですもんね ^^;
by 心如 (2011-11-03 20:38)
taro-uさん、コメントを頂きありがとうございます
日本の年間排出量の50%に相当する量を、中国はたったの一年で増やしているそうです。
10年かけて、日本の排出量を30%減らしても、温暖化防止効果はまったく期待できないことは、小学生でも分かる話だと思っています。
それなのに、いまだにマスコミは温暖化防止の旗振り役しかしません。温暖化防止キャンペーンのCM料が欲しいからだと思いますが、マスコミの垂れ流すおかしな情報に振り回される人が、日本には多すぎると思います。
by 心如 (2011-11-03 20:40)