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温室では間違っているが、大気では正しいのか…!? [気候変動]

夏はなぜ暑いのか

夏はなぜ暑いのか

  • 作者: 佐藤 文隆
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2009/05/28
  • メディア: 単行本
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『夏はなぜ暑いのか』(佐藤文隆/岩波書店)
2009年5月28日 第1刷発行

(P7より引用)

 温室は温室効果で温まるのではない

 可視光で入った太陽光線は、地表で熱化して最終的には赤外線に変わり地球外に放出されます。しかし、二酸化炭素などの温暖化ガスがその流れに渋滞を引き起こすために、温暖化が起こるのです。ガラスも大気のように可視光を通過させますが赤外線は通過しにくい。太陽熱で内部を温める、ガラスで覆われた温室という装置はちょうど大気の温暖化と同じ効果をつかっています。したがって、気候温暖化のメカニズムを「温室効果」と呼んでいます。これは今では世界市民の常識です。
 ところが肝心の温室が温まるのは、この「温室効果」ではないのです。地面の熱が大気中にひろがる理由は初めは「かげろう」にみられるような対流によってであって、可視光がいっぺんに赤外線に変わるのではないからです。温室では空気の対流や拡散または移流(風など)で熱が移動します。温室の外壁は、そういった空気や物体の熱が室外に対流・拡散や移流で逃げていったり、外から冷気が入って冷やされるのを阻止しているのです。それが証拠に可視光も赤外線も通過させる「ガラス」で覆われた「温室」を作って実験しても普通のガラスの場合と同じように温室内の温まり方は変わらないということが示されています。
 温室などとは比べ物にならないくらいに大きな大気を対象にすれば「赤外線の遮蔽云々」が主な効果になるのですが、温室や「硝子戸の中で」の縁側といったスケールでの温まり方は「赤外線の遮蔽云々」とは無関係な、「外の冷気の遮断」こそが主な理由なのです。冬の陽だまりの縁側のぬくもりが硝子戸による「外気の遮断」で保たれているというほうがたしかに実感があります。縁側で言われてみれば、それが「常識」だとすぐにわかるのですが、「温室」という常日頃は実感のないものに譬えられるとつい騙されてしまうのです。
 大気で起こる、いわゆる「温室効果」が温室では起こらないことは専門家の間では、よく知られていたようです。1909年、ウッドは可視光も赤外線も同じように通過させる透明な岩塩を使って示しました。また1963年頃の教科書には温室の温暖化は「温室効果」の4、5倍も大きいことも書かれています(柴田清孝『光の気象学』(朝倉書店)57頁参照)。
 地球温暖化が政治問題化したのは1980年代に入ってからです。そのなかで「温室効果(green-house effect)」という表現が理解を拡げるキーワードとして一人歩きしたのでしょう。専門家の間の学術用語が世界市民の常識用語に転化した時に、「温室」とは比喩だというただし書きが外れたようです。そして専門家もその流れに抗しきれず、そのまま放置したのでしょう。たしかに「赤外線云々」というメカニズムは大気では正しいのです。嘘は誰も気にもかけない「温室の温まるメカニズム」に押し込めればいい。「温室」さえ耐え忍べば済む話というわけです。ただし一部の詮索好きの人間にはきちんと「温室は温室効果で温まるのではない」という真実が忘れられないようにしてほしいものです。
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 まず、「温室が温室効果によって温まるのではない」というのは真実だという点を明記しておきます。

 例として、硝子戸で仕切られた縁側を上げていますが、冬場でもよく晴れた日に、陽だまりに停めた車に乗ればすぐに実感できます。外は木枯らしが吹いていても、車内はポカポカと暖かいのです。

 これは、車内の空気に含まれる温室効果ガスが、車内から放射される赤外線を吸収して、車内の温度を上げているのではありません。

 単純に、シートやダッシュボードなどが日光で温まり、その温まった部分に触れた車内の空気が温まっているのです。締め切った車内の空気は逃げ場がないので温かいのです。窓を開けて換気すると、あっという間に車内は冷えてしまいます。
 日当たりの良い場所に、窓を閉め切って駐車していると、冬場でも車内が暑いくらいになるのは、経験された方もあるのではないかと思います。

 温室や、縁側、陽だまりの車などが日光で温まるのは、いわゆる「温室効果」とは関係ないという点を、よく理解しておいてほしいと思います。


 次に問題になるのは、大気が「温室効果」で温まるというのが正しいのかどうかです。

 これについて説明すると少し長くなりますので、次回の記事で、要点を少し整理して説明を試みたいと思います。

(by 心如)

・・・

【おまけ】

◎死亡診断書
 病院での会話。
看護師 「先生、死亡診断書に署名をお願いします」
医師 「しかし、さっき書いたはずだが…」
看護師 「先生は、死因欄にご自分のお名前を書かれていますが、これでよろしいので?」

・・・
 


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コメント 8

青い鳥

おまけ欄を拝見して笑ってしまいましたが、
笑いごとではない、本当に死亡原因が医師による場合もなきにしもあらず・・・。
こんなことが絶対に起こらないようにして欲しいものだと強く思いました。
又、医師選びは慎重にしなくてはいけない事肝に命じたいと思います。
by 青い鳥 (2011-11-08 11:12) 

大将

よく聞く温室効果ガスと言う言葉
なんだかガスと言う言葉に騙されそうです
by 大将 (2011-11-08 17:29) 

心如

青い鳥さん、コメント 有り難うございます
 死因が医師だという場合もごく稀にはあるかもしれません。でも、正直に、自分の名前を書く医師はいないでしょうね ^^;
by 心如 (2011-11-08 18:08) 

心如

大将さん、コメント 有り難うございます
 温室効果ガスという言葉はよく耳にしますが、実際の大気の温室効果は、温室効果ガスと呼ばれているガスだけがもたらすものではないのです。この点を、一般の人はほとんど知らないと思っています。
by 心如 (2011-11-08 18:15) 

shira

 最近、オマケのジョークが楽しいですね。
by shira (2011-11-08 20:47) 

心如

shiraさん、コメント 有り難うございます
 少しブラックですけどね…^^;
by 心如 (2011-11-08 21:07) 

figaro

春先、窓を閉め切っているから室温が上がっているのに
設定温度27度で冷房を入れるバカ上司を思い出しました。
外は22度程度・・・。
by figaro (2011-11-12 08:48) 

心如

figaroさん、コメントを頂きありがとうございます
 締め切った部屋で、窓から日光が差し込むと室温はかなり上昇します。温室が温まるのと同じ作用ですね。窓を少し開けて換気したら、冷房なんてしなくてもよいのは常識だと思うのですが、最近は常識のない輩が多すぎます ^^;
by 心如 (2011-11-12 08:57) 

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