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温故知新 [雑感]

星と地球と太陽と (1978年) (科学随筆文庫〈10〉)

星と地球と太陽と (1978年) (科学随筆文庫〈10〉)

  • 作者: 辻 光之助
  • 出版社/メーカー: 学生社
  • 発売日: 1978/03
  • メディア: -


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 石筆(宮地政司)

 性善説

 「智に働けば角が立つ。情に掉させば流される。意地を通せば窮屈だ。とにかくに人の世は住みにくい。」そうかといって人の世を逃げ廻ったとて、逃げおおせるものではない。逃げられないと悟ったとき、人の心の温さを知った。
 元来、人の性というものは善であるか悪であるか。なかなか難しい問題だ。親しい友人に性悪を信じる仁がいる。成程、人の性悪なりと観すれば、裏切られたとてうらむこともないし、詐されたとて腹をたてることもない。常任、心は平らである。打ち込んだ仕事にだけは無性に情熱を示しているが、悠々として独立独歩、淡々として人生を楽しんでいる。まことに羨ましい仁である。
 それに反して私は性善説を信ずる。人の性は元来正直で、純情だと考える。はなはだおめでたい方かも知れない。とかく物事を善意に解釈しすぎて、ときに失敗したり、笑われたりする。近ごろは少しはもまれて、巧言令色の裏を考えるようになった。こうなると軍配は性悪説に挙るのだろうか。たしかに世の中は不信、猜疑が渦巻き、対立が多すぎるようにみえる。
 だが、やっぱり私は性善説を信じたい。昔の人は己を知るもののために死すとさえいった。感傷ではなく、そうした信頼を託する人々のいる世の中こそ、生きがいがある。こうした善意の人々も多いのである。
(昭和33年2月)
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バカボンの父s.jpg

 「たしかに世の中は不信、猜疑が渦巻き、対立が多すぎるようにみえる。」と、文中にあります。

 この文章は、昭和33年2月に書かれたものです。

 日本が高度経済成長に向かって発展・成長を始めた時期でしょうか。58年前に書かれた文章を読んでみて、いま現在の日本は当時よりもよい状況にあるのだろうかと考えてしまいます。


 「だが、やっぱり私は性善説を信じたい。昔の人は己を知るもののために死すとさえいった。感傷ではなく、そうした信頼を託する人々のいる世の中こそ、生きがいがある。こうした善意の人々も多いのである。」という筆者の言葉は素晴らしいと思います。

 世の中には、善意の人々が多いというのは事実だと思います。反対に、自分の目先の損得しか考えない愚かな人々も少なからずいます。それでも、「だが、やっぱり私は性善説を信じたい。」という勇気が、人の世の中で生きていくには必要なのだと思います。

(by 心如)

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