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原発に対する未練が、日本経済に大打撃を与える!? [エネルギー]

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天然ガスが恒久的に原発を代替できるこれだけの理由
石井 彰
2012年3月22日(木)

 2カ月以内に日本のすべての原子力発電所が稼働停止する可能性が非常に高くなってきた。
 この事態に、「原発が3基しか動いていない状況で何とか厳冬期を乗り切ったので、このままでも脱原発は十分可能だ」という楽観論が、一部で声高に言われるようにもなっている。
 しかし、夏の電力ピーク需要は冬場よりずっと高く、このままでは夏場に電力不足で工場などの操業に大きな障害が生じる可能性は高い。しかも原発代替の突発的な火力発電所フル稼働で、日本の発電コストは大きく上昇し、これが今後電力料金の大幅値上げとなってツケが近いうちに国民全体に回ってくることになる。
 3.11前は全電源の約3割であった天然ガス・LNG(液化天然ガス)発電は、現時点で日本の全電源の約4割、東京電力や中部電力管内では5割前後にまで急上昇している。自家発電の急遽のフル活用も同様だ。

原発停止による発電コスト上昇は一時的

 ここで誤解していけないのは、この大幅コストアップは元来、原発のコストが安く、火力や自家発電が高いということでは全くないことだ。
 原発の発電コストの大半は設備コストという固定費用(=埋没費用)であり、発電量に応じて新たにコストがかかる燃料費(=可変費用)ではない。逆に、火力発電、特に石油火力発電や天然ガス発電、自家発電は、設備コスト=固定費用は安く、燃料コストが高い。
 既に設備投資が終わっていて、発電の有無にかかわらず発電コストはさほど変わらない、いまだに使用可能な原発をわざわざ止めて、発電量に応じて燃料費が比例的にかかる火力や自家発電を急きょフル稼働させれば、当然発電コストは一時的に大幅に上昇する。
 しかし、原発停止によって発電コストが上昇するというのは短期の一時的現象であって、中長期の構造的な問題では全くない。中長期的に、老朽原発や危険度の高い原発を次々と廃炉にして、すべて火力や自家発電に切り替えても、コスト上昇は原理的に生じない。まず、このことをしっかり認識する必要がある。
 意識的かどうか知らないが、この短期の一時的問題と中長期の問題を一緒くたにした議論をよく見かける。

北米や極東ロシア、東アフリカから調達

 もう一つの短期的な問題は、イランの核開発問題が夏場にかけてこじれ、万が一ホルムズ海峡が一定期間以上、通行不能な事態に陥った場合に、日本中で大電力危機になる可能性である。
 3.11以降、特に昨年夏の菅首相(当時)による定期点検後の原発再稼働のストレステスト評価の条件づけによって、秋以降に日本中の電力会社が、スポット物LNGの世界最大の輸出力を持っていた中東湾岸のカタールに殺到して購入し、原発の大規模な突発停止の穴を何とか埋めようとした。このために、現時点で日本の電力業界のLNG輸入の3割以上がホルムズ海峡内からという事態になった。同海峡が10日間以上も封鎖される可能性は、世界の中東専門家や軍事専門家によって非常に低いと評価されているが、絶対ないとは言い切れない。
 しかし今後、数年以内にはカタールに代わって豪州が世界最大のLNG輸出国に躍り出ることが確実であり、しかもカナダ、米国本土、アラスカなどの北米、および極東ロシアからも大量にLNGが輸出開始される。さらにその先には東アフリカからも大量のLNG輸出が計画されており、日本のLNG輸入のホルムズ海峡依存度は数年以内に劇的に低下し、比率としては限りなくゼロに近づく。
 しかも、現時点でホルムズ海峡依存が高いのは日本の電力業界だけであり、日本の都市ガス業界の依存度は非常に低い。万が一の同海峡危機の場合でも、電力業界へ一定の融通も可能だ。したがって、これも特殊状況下における一時的な問題にすぎず、中長期的な構造的問題では全くない。
 このへんの事情も、短期的な一時的問題と中長期の問題を混同した、エネルギー安全保障論議が無きにしも非らずであるが、大きな誤解をしないように注意したい。
 今後の中長期の原発依存については、「全面廃止=脱原発」かどうかは別として、少なくとも省原発、縮原発にならざるを得ないことは、ほぼ日本のコンセンサスと言ってよいだろう。では何で代替するのか?

再生可能エネルギーの導入は究極の自己矛盾に陥る

 マスメディアやネット・ブログなどでは、太陽光発電や風力発電などの導入が本格し、いずれ大半の原発、あるいは化石燃料も含めて既存のエネルギー源の大半を代替できるというような議論もよく見かける。だが、それは既に筆者が様々なところで述べたように原理的に不可能であり、エネルギーの専門家で可能だと思っている人はまずいない。
 その具体的な理由をここでは繰り返さないが、要すれば、日本は国土が非常に狭くて人口密度が非常に高く、またその国土の67%が森林傾斜地であり、国土面積当たりの経済規模、経済活動密度が北欧などとは比較にならないほど高いので、原理的に出力密度(地表面積当たりの出力)が非常に低い再生可能エネルギーを主軸にすることが不可能であるということだ。
 無理に導入すれば、大規模な自然環境破壊にならざるを得ず、何のために無理して再生可能エネルギーを導入するのかという究極の自己矛盾に陥る。この原理を理解していない脱原発論は、ほとんど無意味である。同時に再生可能エネルギーはコストや使い勝手(不安定性)の問題も非常に大きい。
 太陽光発電や風力発電に関しては、日が照り、風が吹かなければ発電できないので、見かけの発電容量と実際の発電可能量に非常に大きな格差があることに要注意だ。前者は設備能力の約1割、後者は2割しか発電できない。例えば、「日本の太陽光発電設備の合計が原発6基分に相当する見込み」という記事は、実際の発電能力は0.6基分と読み替える必要があるが、果たしてどこまで一般の人が理解しているだろうか?
 二酸化炭素排出の増加なしに、リーズナブルなコストで、かつ確実に、大量に、速やかに原発を代替する方法は、天然ガス・コンバインドサイクル発電(天然ガスを燃焼させてタービンを回し、排気ガスを利用して蒸気でタービンを回転させる複合発電)による、旧型石炭火力発電所を主とした発電効率の悪い旧式火力発電所の代替(同じ二酸化炭素排出量で2~3倍の出力を得られる)と、天然ガスによる分散型コジェネレーションしかない。
 したがって、天然ガスによる原発代替を主軸に、再生可能エネルギーを補助的な代替策とせざるを得ない。天然ガスによる原発代替は、現在の緊急避難的な状況だけでなく、中長期的にも全く同じである。「いずれ再生可能エネルギーが主力になるまでの、つなぎとしての天然ガス/LNG」という発想は、根本的に誤っていることを認識することが大事だ。

腰を据えた調達コスト低減戦略が必要

 しかし、その場合に日本が世界一高いLNGを購入し続けていることが大問題となる。
 現在の日本のLNG・天然ガス購入価格は、平均で百万Btu(英国熱量単位)当たり16ドル以上である。シェールガス革命が進行中の米国の天然ガス価格はわずか2.5ドル、欧州の天然ガス価格平均は8~9ドル、ドイツがロシアから長期契約で輸入している欧州では割高な価格が10~11ドルで、いかに日本が飛びぬけて高い価格で調達しているか一目瞭然だ。
 さらに、ドイツやイタリアなどは購入価格が既に日本よりはるかに低いにもかかわらず、ロシアなどに対し、欧州平均価格より高い天然ガスはこれ以上購入できないとして、現在、長期購入契約の改定を求めて仲裁裁判に訴えている。
 この世界一高いLNGの購入を3.11後、特に菅総理のストレステスト発言後、日本の電力業界がさらに一挙に拡大せざるを得なかった。このため、日本のLNG購入額は2011年全体で、前年比1兆3000億円増となった。日本が石油危機以来、30年ぶりに経験した貿易赤字額の半分以上にも相当する莫大な金額に上った。
 今年は、輸入額はさらに大幅に増加する。昨年は、中国や韓国など、日本と同様にアジア太平洋地域のLNGに依存する諸国にも、日本の電力業界による高価格購入の急拡大の悪影響が波及し、これらの国から傍迷惑であるとの非難を受けた。
 一方で、中・韓は、日本より一歩早く、LNG・天然ガス購入価格の大幅引き下げを狙って、様々な戦略を既に打ち始めている。例えば、今年1月に韓国勢は米国シェールガス・ベースの新規LNGの大量購入に踏み切った。この調達コストは、韓国着で現行の日本の半値以下だ。中国も、北米から最新技術を導入して国内シェールガス資源の開発に本腰を入れ出し、かつ安価な中央アジアからのパイプライン・ガス輸入を戦略的急拡大中だ。

LNG調達コストが高くてもよい理由はなくなった

 なぜ、日本のLNG・天然ガス調達戦略が、欧州はもちろんのこと、中韓にも大きく後れを取っているのか?
 それには、これまで様々な理由があった。エネルギー市場の自由化がなされていないために、欧米勢のようにコスト低減圧力が弱かったこともあるし、日本の電力業界にとっては、原子力推進が最優先であり、その次の優先順位が石炭、天然ガスは3番目に過ぎず、戦略的な対応のインセンティブを大きく持っていなかったこともある。LNG・天然ガスが高ければ、原子力、石炭を増やせばよいという発想が濃厚だった。原発推進が可能であり、二酸化炭素排出量が多い石炭でも拡大使用が可能な、二酸化炭素排出規制がない条件下では、この考え方にも合理性があった。
 しかし、3.11後は状況が一変している。原発はこれから大幅減にならざるを得ないし、先進国である日本が石炭依存を増やして二酸化炭素排出を大幅に増加させることは、事実上不可能である。今や、日本のエネルギーの最重要課題は、LNG・天然ガスの調達コストをいかにして諸外国並みに低減するのかということになったのである。
 この調達戦略の構築にとって最大の障害は、日本の電力業界の原発推進・維持への未練ではないだろうか。例えば、韓国勢がいち早く確保した極めて安価な米国産LNG第1号案件を、日本勢がむざむざ見逃したのは、原発が今まで通り維持できれば、長期購入契約で輸入する米国産LNGは結果的に不要になるのではないかという懸念というか、未練が二の足を踏ませた様相が強い。

未練がある限り、調達で負け続ける

 このような未練が続く限り、腰の入った調達コスト低減戦略は構築できず、日本のLNG・天然ガス調達は負け続ける。これまでの延長線上の場当たり的な受け身の対応では、抜本的低減は無理だ。
 抜本的改善には、北米でのLNGのガス田権益取得とパッケージにした北米LNG調達、極東ロシアからのプイプラインやCNG(圧縮天然ガス)による輸入、新規参入のLNG中小開発業者や浮体型LNGやCBM(炭層メタン)などの新規ビジネスモデルからの優先購入といった、これまで若干のリスクがあるとして敬遠してきた新機軸の戦略的採用が不可欠だ。
 中韓など利害が共通な諸国との連携も必要だろうし、日本国内でも、企業同士、電力・ガス業界同士の連携プレーも必要になってくる。電力・ガス業界による、今まで以上に積極的なガス田・LNG権益参加も必要不可欠だ。
 これまでと次元が異なる新機軸の腰の据わった戦略を採用するには、原発に対する一定の見切り、ミニマム・ディフェンスラインまでの撤退戦の思い切った覚悟が絶対に必要だろう。
 筆者は必ずしも原発全廃論者ではないが、日本の電力業界の原発維持に対する未練が大きいほど、天然ガス戦略は脆弱で、中途半端になり、結果的に日本経済は大打撃を受けることになる点を強調したい。
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原発は要らないと思います [エネルギー]

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http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20120308-OYT1T01249.htm

原発事故で拡散、プルトニウム241初検出

 東京電力福島第一原子力発電所事故で拡散したとみられるプルトニウム241を、放射線医学総合研究所などが福島県内で初めて検出した。

 文部科学省による昨年9月の調査結果では、同位体のプルトニウム238、239、240を検出していたが、241は調査対象外だった。英国の科学電子雑誌に8日、発表した。

 研究チームは浪江町、飯舘村のほか、広野と楢葉の両町にまたがるJヴィレッジの3か所から採取した土壌や落ち葉から、241(1キロ・グラムあたり4・52~34・8ベクレル)を検出した。241は国内ではほとんど検出されないため、原発事故で拡散したと結論づけた。

 最大濃度の落ち葉が採取された場所の今後50年間の被曝(ひばく)線量は0・44ミリ・シーベルトと試算され、健康影響はほとんどないと研究チームはみている。ただ、241が崩壊して生じる放射性物質のアメリシウムは植物へ移行しやすいという研究もあり、「継続調査が必要だ」としている。文科省は241を調査から外した理由について、「検査に時間がかかるため、同じベータ核種のストロンチウムを優先した」と説明している。

(2012年3月9日08時04分  読売新聞)
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コノハズク 01HL.jpg

 プルトニウム241が検出されたそうだ。この記事を見て、大した量ではないと言う人がいます。確かに、プルトニウム241の量だけを見たら大した量ではないと言えるのは事実かも知れません。でも、その他の放射性物質を含めた放射能漏れを総合的に見た場合はどうなのでしょうか? 根拠もなく危険だと言って大騒ぎするのはよくないと思います。でも、細切れにされた情報だけを見て、まったく問題が無いと安易な判断をするのも如何なものかと思います。


 何度も繰り返しますが、使用済み核燃料には大量の核分裂生成物が含まれています。日本の核燃料サイクルは確立されていません。使用済み核燃料を再処理せず直接処分の場合でも、最終処分を行うまでには50年以上も掛かるのです。
 いま現在の我々が、豊で便利な生活をするために、50年以上も先の子どもや孫の世代に、厄介な核廃棄物の処理を押し付けるのは如何なモノかと思います。使用済み核燃料という、安全に処理ができない厄介なゴミを出すのが原発なのです。
 
 昨年の福島第一原発の事故が、あの程度の事故で済んだのは幸運だった。もし、あの大地震が、土曜や日曜、あるいは夜間に起きていたら、もっと大きな事故に発展していたのです。福島第二原発も大事故に発展していた可能性があると言われています。そうなれば、首都圏の三千万人が避難しないといけない大惨事になっていた可能性が高いのです。

 福島第一原発事故の状況だけを見て、原発事故は大騒ぎする必要がないと言う人は、たまたまこの程度の被害で済んだのは幸運だったという認識を持たない大馬鹿者なのです。他の原発で同じ規模の地震が起きた場合、どの程度の被害になるかはまったく保証できないのですから…
 
 大きな地震がいつ何処で発生するかなんて誰にもわからないのです。地震の巣と言われる日本で、これ以上原発を運転するのも不安なのです。原発は地震や津波に弱いというのは十分に証明さていると思います。使用済み核燃料(核廃棄物)の最終処分に目処も立っていません。成るべく早い時期に、原発に依存しない社会を実現すべきではないかと私は思います。
 
(by 心如)


福島で大地震が起きる可能性…!? [エネルギー]

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http://www.afpbb.com/article/disaster-accidents-crime/disaster/2858318/8475783
福島第1原発近くで大地震の恐れ、東北大教授らが警告
2012年02月16日 11:32 発信地:パリ/フランス

福島第一原発.jpg
無人機で上空から撮影した東京電力(TEPCO)の福島第1原子力発電所(2011年3月20日撮影、資料写真)。(c)AFP/AIR PHOTO SERVICE

【2月16日 AFP】東日本大震災以降、東京電力(TEPCO)の福島第1原子力発電所付近の地層において、大地震が発生しやすい状態となっていると指摘する東北大学(Tohoku University)の教授らによる研究論文が14日、欧州地球科学連合(European Geosciences Union、EGU)の学術誌『Solid Earth』で発表された。

 趙大鵬(Zhao Dapeng)教授(地震学)ら日中の研究者3人が共同執筆した論文は、将来起こりうる大規模地震に備え、福島第1原発での安全強化策をとるよう訴えている。

 趙教授らは、地震波断層撮影と呼ばれる技術を用い、東北地方の地殻やマントルに地震波が及ぼす影響を調べた。この技術は、医療用のCTスキャンと同様の原理で地層を調べ、地震波の種類やセンサー間を伝わる速度から地中の断面図を構築する。 

 研究チームは、前年4月11日に福島第1原発から南西60キロの距離にある、いわき市で起きた地下6.4キロを震源とするマグニチュード(M)7.0の地震に着目した。この地震は東日本大震災の余震としては最大規模のもの。

 調査の結果、いわき市の低活動性活断層が、この地震の揺れで活性化した可能性があることが分かった。同地域では前年3月11日から10月27日までに、M1.5以上の揺れが2万4108回観測されたが、2002年6月3日から前年3月11日までの期間に同規模の揺れは、わずか1215回しか観測されていない。

 趙教授は、その要因を太平洋プレートにあるとみている。太平洋プレートが、ほぼ東北全域の地下に横たわるオホーツク(Okhotsk)プレートの下に沈み込む際、発生する摩擦熱で水が上昇し、活断層周辺が滑りやすい状態となっているとした。さらに東日本大震災後、いわき市の断層がオホーツクプレートから受ける圧力の方向が大きく変わったという。

 趙教授は記者会見で、福島原発周辺にも複数の活断層があり、いわき市や福島原発地域でも地層構造の変化が起きている可能性があると指摘。いわき市で発生した直近の強い地震を考慮すると、福島でも大地震が起こる可能性があると警告した。ただ地震発生の時期までは予測できないという。(c)AFP/Kate Millar
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脱原発、代替供給がカギとは思うが…!? [エネルギー]

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http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTJE81G00320120217
インタビュー:脱原発は代替供給がカギ=菅前首相
2012年 02月 17日 21:26 JST[東京 17日 ロイター]

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 2月17日、菅直人前首相は、ロイターのインタビューに応じ、昨年3月11日の東日本大震災とそれに伴う東京電力福島第1原子力発電所の事故を契機に、首相在任中に打ち出した「原発に頼らない社会」を実現するには、「原発がなくても必要なエネルギーを供給できることがカギ」だと強調した。都内で撮影(2012年 ロイター/Yuriko Nakao)

 そのためにも「再生可能エネルギーを増やすには改革が必要で、改革のあり方の例としては発送電分離が一つの案として有力」と指摘した。

 前首相はまた、国による東電への公的資本注入と、国がどの程度の議決権を握るかが焦点となっていることについて、「そうした質問には答えないが、いまの内閣は頑張っている。この問題は現内閣がしっかり判断してくれると思う」と語った。インタビューでの主なやり取りは以下の通り。

──退任から約半年。最近の活動は。ダボス会議(世界経済フォーラム年次会議)に出席したが。

 「原発に頼らないでも、経済も生活も含めてしっかりやっていける日本や世界を目指して活動しようと思い、退任後の5カ月余り、そこにエネルギーを集中している。ダボスでは、核兵器では核拡散防止条約という形で究極的には核兵器をなくしたいという国際的なルールがあるが、原発については必ずしもそうしたルールがない。しかし、事故や高濃度の廃棄物の問題は各国に任せていいことではない。国際的なルール作りやIAEA(国際原子力機関)など議論して方向性を出していこうという問題提起するためにいろいろな方と会い話した」

──脱原発を打ち出した理由は。

 「3.11以前は、私自身、原発の安全性をしっかりと確認したうえで活用していく。特にCo2(二酸化炭素)削減という問題が重視された中で、3.11前は化石燃料を使わないエネルギーとしての原発にシフトしたほうが温暖化問題に対応できるという側面もあって、国の政策としても原子力依存を強めることになっていたし、私もそういう立場だった」

 「しかし、3.11の原発事故を経験する中で考え方を変えた。最大の理由は、場合によっては首都圏を含む地域から人が住めない、避難しなければならないことになりかねない状況に拡大した時には、国の存在が危うくなる。大きなリスク、危険性に対してどう原発の安全性を確保できるのか。いろいろな技術はあるが、それだけ大きなリスクをカバーできない。一番安全なのは原発に頼らないでもいい社会を作る。それは可能だ。そう考えた」

──いつまでに原発ゼロにできるか。

 「原発がなくても必要なエネルギーが供給できるというのが大きなポイント。原発が非常に危ないのでエネルギーが多少足りなくても仕方がないという人もいるが、国民全体ではエネルギーが足らなくてもいいという判断は多くの人はしていない。原発がなくても必要なエネルギーが供給できる、その態勢を作ることに私は一番力を入れている」

 「残念ながら日本では再生可能エネルギー源は水力を除くと電力の中で1%。ドイツはすでに20パーセントで、(日本では)これまでは非常に抑えられてきた。だから急激に増やしていく必要がある。そのために日本版フィード・イン・タリフ(FIT=再生可能エネルギー全量買い取り制度)の法律を作った。そうしたことが順調にいけば、例えばドイツは2050年までに8割のエネルギーを再生可能エネルギーで賄うと言っているが、それに追いつくような方向も全力を挙げれば可能だと思っている」

──原発が要らないという時期までに、(原発は)国有化など何らかの形で国家の仕組みが必要だという見方は。

 「例えば、北海道の北のほうは風力が非常にいいが、そこに風力発電機を付けても送電線がない。北海道電力(9509.T: 株価, ニュース, レポート)に送電線を作るように要望しても北電にとってはすでに電力はあるから送電線を(新たに)引くメリットはない。しかし、日本全体には必要な仕事。そうすると、送電をそれぞれの電力会社の自主判断に任せるのか、国全体として判断としてやるべきか。まずは欧州のほとんどの国のように発電と送電を分けるなど、再生可能エネルギーを増やすためにどういう制度改革が必要なのか、電力会社のあり方については全体の議論が必要」

──発送電分離が必要だという考えか。

 「諸外国の例をみるとソーラーや風力のような小規模の発電を増やすためには、巨大な原発や火力発電を持っている電力会社が送電も独占的に持っている状況の改革が必要だ。改革の例として発送電分離は一つの案としては有力だと思っている」

 「日本も潜在的にはこの分野についてものすごく高い能力がある。これらの分野はイノベーションのチャンスの塊だ。(従来)それらを抑え込んできた。(いまは)その蓋が取れた状況で、これを開けて積極的にイノベーションを進めていく。そういう点では私は楽観的だ。十分、日本はドイツに負けないテンポで原発や化石燃料以外のエネルギー供給を増やしていく一方で、住宅やオフィスで省エネを徹底的に進める。そういう意味で、脱原発社会を作ることが、日本の(成長)モデルになることは十分に可能だと思っている」

 「潜在能力をしっかり生かすかどうかが今年(がカギ)だと思う。(7月開始の)FITの条件が決まり買取が可能だということがわかれば、関係企業はいろいろなことを考えている。例えば三菱重工業(7011.T: 株価, ニュース, レポート)は大きな風力(発電機)をイギリスやアメリカに売っているが、今度、福島沖に浮体式の風力発電7000キロワットの風車を140基ぐらい並べようと計画している。これだけの規模ができれば世界で最も進んだものになる。日本の周りに浅い海は少ないが、多少深い海でよければ(浮体式の)適所はたくさんある」

──国が東電に公的資本注入を行い、議決権の3分の2以上を握ることが議論されている。

 「そういう質問には答えない。私が申し上げたいのはいまの内閣は頑張っているということ。私は、再生可能エネルギーを増やして原発がなくても済むような社会にしていこうということに力を注いでいる。それと矛盾するようなことがあれば、いろいろ言わないといけないが、いまの内閣は基本的に(前首相と)同じ方向を目指していると思う。この問題は現内閣がしっかり判断してくれると思う」

(インタビュアー リンダ・シーグ 浜田健太郎 久保田洋子 石黒里絵)
(ロイターニュース、浜田健太郎)
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国内原発、54基がすべて停止したら!? [エネルギー]

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http://mainichi.jp/select/weathernews/news/20120218k0000m040035000c.html

関西電力原発:高浜3号機定期検査で全11基運転停止

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高浜原発3号機(手前)=福井県高浜町で、本社機から竹内紀臣撮影

 関西電力は17日、稼働中の高浜原子力発電所3号機(福井県高浜町、出力87万キロワット)が20日に定期検査入りし、保有する原発全11基(総出力977万キロワット)が運転停止すると発表した。東京電力がトラブル隠しで03年に全17基停止して以来の規模。関電は原発依存度が国内の電力会社で最も高く、原発の再稼働の見通しは立っていないものの、今冬の大規模停電などは避けられる見通し。関電は原発以外の電力を確保し、安定供給を図る。

 関電は20日午後11時ごろ、高浜原発3号機の発電を止め、21日未明に原子炉を停止する予定。原発全停止後は、火力発電所28基(同1450.7万キロワット)のフル稼働や他の電力会社などからの買電を増やすことで、供給力は2600万キロワット前後を確保する。企業や家庭による節電に一定の効果があり、この先は寒さが緩み、暖房などの電力需要が低下するため、3月末までの予想最大需要2559万キロワットを満たす見通し。

 関電の原発全停止は93年に11基体制になって以降初めて。米スリーマイル島原発事故が発生した79年、安全対策などのため4日間全停止(当時は6基体制)したが、発電量実績に占める原発の比率は約24%で、電力需給に影響はなかった。

 10年度の原発比率は51%にのぼる。ただ、関電は今冬、昨冬比10%以上の節電を要請。この間、大半の原発が停止したものの、電力供給力は需要に対し10%以上余力がある日がほとんどだった。

 関電は原発再稼働に向け、大飯原発3、4号機の安全評価(ストレステスト)を実施し、経済産業省原子力安全・保安院は「妥当」と判断を示した。しかし、再稼働に必要な地元自治体の同意や首相らによる政治判断の見通しは立っていない。

 東電福島第1原発事故後、全国の商業用原子炉54基のほとんどは停止している。福井県内の関電以外の3基は既に停止しており、全14基が停止する。高浜原発3号機以外で稼働中の東電柏崎刈羽原発6号機(新潟県柏崎市、出力135.6万キロワット)、北海道電力泊原発3号機(北海道泊村、同91.2万キロワット)も4月末までに定期検査入りすると、国内の原発すべてが停止することになる。【横山三加子】

毎日新聞 2012年2月17日 19時46分(最終更新 2月17日 20時30分)
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