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「センチメント」とは…!? [エネルギー]

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http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120210-OYT1T01124.htm
原発住民投票の動き、石原知事「センチメント」

 東京都で原子力発電所稼働の是非を問う住民投票を目指す市民グループ「みんなで決めよう『原発』国民投票」の集めている署名が、都条例制定の直接請求に必要な法定数を上回る見通しになったことについて、石原慎太郎知事は10日の定例記者会見で「そんな条例を作れるわけもないし、作るつもりもない」と否定的な見解を示した。

 石原知事は「人間で一番やっかいなのはセンチメントだ。原爆のトラウマがあるから恐怖感で(原発反対を)言う」と反原発運動を批判、そのうえで「人間の進歩は自分の手で技術を開発し、挫折や失敗を克服することで今日まで来た」と述べた。

 市民グループから住民投票条例制定の直接請求が出された場合、石原知事は意見を添えて都議会に条例案を提出する。都議会で条例案を審議し可否を判断する。

(2012年2月10日21時18分  読売新聞)
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原発事故、最悪の事態がありえた…!? [エネルギー]

官邸から見た原発事故の真実 これから始まる真の危機 (光文社新書)

官邸から見た原発事故の真実 これから始まる真の危機 (光文社新書)

  • 作者: 田坂広志
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2012/01/17
  • メディア: 新書


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http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20120207/226949/

「原発事故の最悪シナリオが避けられたのは“幸運”に恵まれたからです」
今、戒めるべきは「根拠の無い楽観的空気」
田坂 広志(たさか・ひろし)
――多摩大学大学院教授。1974年東京大学工学部原子力工学科卒業、1981年同大学院修了。工学博士。1981年から90年にかけ、民間企業にて青森県六ヶ所村の核燃料サイクル施設の安全審査プロジェクトに従事し、米国のパシフィックノースウエスト国立研究所で高レベル放射性廃棄物の最終処分プロジェクトに参画する。3月11日の福島原発事故に伴い、内閣官房参与に任命され、原発事故への対策、原子力行政の改革、原子力政策の転換に取り組む。著書多数。近著に『官邸から見た原発事故の真実』――
2012年2月8日(水)

 筆者は、東京電力福島第1原発事故を受け、内閣官房参与として2011年3月29日から9月2日まで、官邸において事故対策に取り組んだ。そこで、原発事故の想像を超えた深刻さと原子力行政の無力とも呼ぶべき現実を目の当たりにし、真の原発危機はこれから始まるとの思いを強くする。これから我が国がいかなる危機に直面するか、その危機に対して政府はどう処するべきか、この連載では田坂氏がインタビューに答える形で読者の疑問に答えていく。

―― 田坂さんは、今年1月17日に上梓された『官邸から見た原発事故の真実』(光文社新書)において、福島原発事故は、「最悪の場合には、首都圏三千万人が避難を余儀なくされる可能性があった」と述べられていますね。これは、最悪の場合を想定したシミュレーション計算をご覧になったからと述べられていますが、それは、昨年末に原子力委員会が発表した昨年3月25日付のシミュレーション計算でしょうか?

田坂:同様のシミュレーション計算の結果を、私も、昨年3月末に見ています。

 この原子力委員会のシミュレーション計算の結果は、「福島第一原子力発電所の不測事態シナリオの素描」というメモとして、すでに公表されていますので、多くの方がご覧になっていると思いますが、このメモは、この福島原発事故が最悪の事態に進展した場合、「強制移転をもとめるべき地域が170km以遠にも生じる可能性」や「年間線量が自然放射線レベルを大幅に超えることをもって移転を希望する場合認めるべき地域が250km以遠にも発生することになる可能性」があったことを明らかにしています。

首都圏三千万人避難の可能性もあった

 メモの中では、「首都圏三千万人の避難」という言葉は直接には使われていませんが、「170km以遠」「250km以遠」ということは、端的に言えば「首都圏三千万人の避難」にも結びつく可能性があったということを示しています。

―― その深刻な「最悪の事態」は、直ちに起こる可能性があったのでしょうか?

田坂:いえ、その「最悪の事態」は、あの時点においても、直ちに起こる可能性はありませんでした。原子力委員会のメモにも書かれているように、「最悪シナリオ」とは、次のようなものです。

 まず、1号機の格納容器や圧力容器で水素爆発が起こり、容器外への大量の放射能の放出が生じる。これに伴ってサイト内の被曝線量が急激に増大し、作業員はサイトからの退避を余儀なくされる。その結果、すべての原子炉と使用済み燃料プールの注水と冷却が困難になり、時間の経過とともに、原子炉と燃料プールがドライアウトを始め、まず、4号機プールに保管してある使用済み燃料が溶融崩壊を起こし、コンクリートとの相互作用により、大量の放射能の環境への放出が始まる。そして、それに続いて、他の原子炉や燃料プール内の燃料も溶融崩壊を始め、さらに大量の放射能の環境への放出が起こる。

 これが、「最悪シナリオ」と想定されたものです。

 従って、このシナリオが起こるためには、「水素爆発が起こる」「サイト内放射線量が急激に増大する」「作業員が退避を余儀なくされる」「原子炉と燃料プールの注水と冷却が不可能になる」「原子炉と燃料プールの核燃料の溶融崩壊が起こる」といった事象が連鎖的に生起することが前提となるわけです。

 そして、原子力委員会のメモによれば、この「最悪シナリオ」が起こっても、最も早く放射能の放出が始まる4号機の燃料プールでも、最初の放射能の放出が始まるのが「6日後」であり、本格的な放出が始まるのが「14日後」という試算結果となっています。

 従って、この「最悪シナリオ」は、「直ちに」起こるものではありません。

 もし、深刻な水素爆発が起こっても、「最悪シナリオ」に向かって、最低でも1週間近くの時間的余裕は存在する状況でした。

―― お話を伺うと、それは、かなり「最悪」の事態を想定したシナリオかと思いますが、田坂さんは、なぜ、そのシナリオが起こり得ると、懸念をされたのでしょうか?

田坂:まだ、あの時点では、「何が起こってもおかしくない状況」だったからです。

 例えば、この「最悪シナリオ」の引き金を引くのは「新たな水素爆発」ですが、これは、いつ、どこで起こってもおかしくない状況でした。そもそも、炉内に燃料の存在しない4号機の建屋でも水素爆発が起こったわけですが、現場では、どうしてそこで水素爆発が起こったかが分からなかった。隣の3号機からつながっている配管から水素が漏れてきたのではないかなど、様々な推測をしましたが、あたかもミステリーのように、現在もその正確な原因は分かっていないのです。

 すなわち、我々は、あの時点において、事故の状況を正確に把握できておらず、「何が起こっているかが分からない状況」だったのです。そして、「何が起こっているかが分からない状況」というのは、「何が起こってもおかしくない状況」を意味していたわけです。

 実は、この「何が起こっているかが分からない状況」というのは、現在も同じです。先日、ようやく炉内にファイバースコープを挿入して水位の確認ができましたが、予想に反して、水位が大幅に低下していたわけです。「事故の収束宣言」がなされた現時点においても、事故の状況が正確に把握できていないという問題は、全く変わっていないのです。

もう一つの最悪シナリオ

―― 田坂さんが懸念された「最悪シナリオ」は、「水素爆発」だけだったのでしょうか?

田坂:いや、もう一つ懸念した「最悪シナリオ」がありました。

 原子力委員会のメモでは語られていませんが、もう一つの「最悪シナリオ」は、大規模な地震と津波が再び原発サイトを襲い、4号機燃料プールの構造体が崩壊し、冷却水の喪失が起こり、プール内燃料のドライアウトと溶融崩壊が起こることでした。

 これも、3月11日以降、日本列島全体が「地震列島」の様相を呈しており、各地で余震が頻発していましたので、起こってもおかしくない出来事でした。

 特に、あの当時は、原子炉と燃料プールの安定冷却機能が全く回復していない状況でもあり、もし、「新たな水素爆発」や「再度の地震と津波」が起こった場合には、事態は、「最悪シナリオ」に向かって進展していく可能性があったのです。

―― しかし、幸いなことに、今回の事故では、新たな水素爆発も、再度の地震や津波も起こらず、安定冷却に漕ぎ着けることができた。それで、田坂さんは、この事故が収束に向かったのは「幸運だった」と言われるのですね?

田坂:そうです。もちろん、事故が収束に向かったのは、何よりも、福島原発の現場で、冷却システムの設置やプールの構造体の補強など、様々な作業に携わった方々の献身的な努力のお陰ですが、その努力が水泡に帰する最悪の出来事が起こらなかったという意味では、やはり、「幸運だった」と言わざるを得ないのです。

いま広がる「根拠のない楽観的空気」

 そして、私が、敢えて、この「幸運だった」ということを申し上げるのは、いま政界、財界、官界のリーダーの方々の中に、「根拠の無い楽観的空気」が広がっているからです。残念ながら、これらのリーダーの方々の中には、今回の事故の深刻さを直視することなく、また、事故原因の徹底的な究明をすることなく、「もう福島原発事故は収束した」「もう同じ事故を起こすことはない」という楽観的意見を語る方がいます。

 実は、そうした「根拠の無い楽観的空気」こそが、今回の福島原発事故を起こした遠因であることを、我々は、肝に銘じるべきでしょう。

 実際、3月11日以前に、「想定よりも高い津波が来る可能性がある」「全電源が喪失する可能性がある」との指摘はあったわけですが、それらの指摘に対しても、「そうした極端な出来事は起こらないだろう」という楽観的空気が、事前の対策を怠らせたわけです。このことの真摯な反省が無ければ、我が国は、また、同じ過ちを繰り返すことになると思います。

―― この「幸運だった」という現実は、リスク・マネジメントの観点から見ると、どのような意味を持つのでしょうか?

田坂:「幸運だった」ということは、リスク・マネジメントが有効に機能していないことを意味しています。なぜなら、リスク・マネジメントにおいては、そもそも、二つのことが極めて重要だからです。

 一つは、「起こった危機の原因、経緯、現状が、明確に把握できていること」。

 もう一つは、「起こった危機への対処、管理、制御が、明確にできること」。

 もとより、真のリスク・マネジメントとは、未然の対策によって危機を発生させないことですが、もし、不幸にして危機が発生してしまった場合にも、この二つのことができていれば、リスク・マネジメントは、それなりに有効に機能します。すべてが「人知の及ぶ範囲」にあるからです。

 しかし、残念ながら、福島原発事故は、この二つとも極めて不十分な状況でのリスク・マネジメントになってしまったのです。すなわち、それは、「人知の及ぶ範囲を超えた状況」になってしまったということであり、事態の推移を、文字通り「運」に任さざるを得ない状況になってしまったということなのです。

 ある意味で、リスク・マネジメントの専門家から見た福島原発事故の問題の深刻さは、事故が起こったことだけでなく、事故の原因、経緯、現状が明確に分からないこと、事故への対処、管理、制御が十分にできないことだったのです。

(中略)

 そもそも、原子力の問題を語るとき、多くの識者は、「安全」と「安心」が重要であると言われますが、実は、「安全」と「安心」よりも重要なものがあるのです。

「安全」「安心」よりも重要な「信頼」

 それが、「信頼」です。

 なぜなら、どれほど政府が「安全です」「安心してください」と国民に語っても、その政府自身が国民から「信頼」されていなければ、そのメッセージは意味を失うからです。

 そして、残念なことに、「絶対に大規模な事故は起こしません」と語り続けた原子力発電所が、あの深刻な事故を起こしたことによって、国民から政府と原子力行政に対する「信頼」は、決定的に失われてしまったのです。政府と原子力行政は、まず何よりも、その事実を直視し、深く理解するべきでしょう。

―― では、どうすれば、政府と原子力行政は、その「失われた信頼」を回復することができるのでしょうか?

田坂:その質問には、いくつかの視点からお答えする必要があるのですが、第一に重要なことは、「リスク・コミュニケーション」です。すなわち、こうした深刻な危機が発生したとき、政府は国民に対して、いかなる形でコミュニケーションをするか、そのときに大切にすべきものは何か、ということです。

 次回、そのことを語りましょう。
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実用可能な風力(陸上)は、原発12基分…!? [エネルギー]

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http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1105/19/news008_2.html
立ち上がる風力発電(1):
現実的に見ても大きな可能性を秘める「風力発電」

再生可能エネルギーの主力として注目される風力発電。
その可能性をシリーズで探っていく。
第1回は、風力発電の導入ポテンシャルについて解説する。

 世界で風力は原発を上回るエネルギーへ

 自然エネルギー(再生可能エネルギー)が世界的にすごい勢いで伸びている。その中心的な存在が「風力」だ。

 国際エネルギー機関(IEA)が発表した2011年版「Clean Energy Progress Report」によれば、世界の風力発電の設備容量は2010年で195GW、それが2020年には3倍の575GWまで増える見通しだ(1GWは100万kW、標準的な原発1基の出力容量に相当)。これに対して太陽光発電は成長率こそ風力を上回るが、2020年でも126GWにとどまる。また、原子力は福島の事故を勘案していない見通しでも、2010年の430GWが2020年に512GWと低成長だ。つまり、世界的には向こう10年で、風力が設備容量で原子力を上回る電源となるわけだ(実際の発電量は設備稼働率による。詳しくは後述)。

【中略】

 現実的に見れば陸上風力で原発何基分?

 前述した導入ポテンシャルが高い3地域は、陸上風力・FIT単独シナリオだけで最大、北海道62.4GW、東北39.4GW、九州11.7GWとなる。これに対して電力会社の発電設備容量は、北海道7.4GW、東北16.6GW、九州20GWでしかない。つまり、北海道などは、今ある発電設備容量の8倍強もの導入ポテンシャルがある。これが全て開発されるとは到底考えられない。北海道で余った電力を本州に融通すると言っても、連携設備能力は0.6GWでしかない(今回の大震災で地域間連携設備能力の低さは問題視されている)。

 斉藤氏は「各地域で電力会社の設備容量を上限とすれば、陸上風力・FIT単独シナリオの導入ポテンシャルは最大でも60GW程度。そのうち、実際に開発可能なのは、半分の30GW程度ではないか」と指摘する。

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図4 現実的な導入ポテンシャルの見方

 日本版FITの法案では、太陽光を除く電源の場合、買取価格は15~20円/kW、買取期間は15~20年の範囲で決めるとしている。「FITの制度設計によって風力発電事業の採算性は変わる。買い取りの価格・期間が厳しく設定されると、事業者は平均風速や初期コストなどでより条件の良い地区を選ばなければならず、導入ポテンシャルは減る」(斉藤氏)。ちなみにJWPAは「風力発電の拡大には20~24円/kWh・20年が必要」と主張している(ちなみに現行のRPS法+補助金は16円/kWh・17年に相当するとしている)。

 ともあれ、FIT単独シナリオで導入される陸上風力の設備容量を30GWとしてみる。後は稼働率をどう見るかだが、仮に導入ポテンシャル調査で使われる最も低い推計条件「平均風速6.5m/sで理論設備利用率27.5%」を適用すると、年間発電量は7万2300GWh/年となる。一方、原発の平均稼働率は67%(10年度実績)なので、標準的な原発1基の年間発電量は5900GWh/年。つまり、陸上風力の発電量はおよそ原発12基分となる。

 メディアで言いはやされた「東北だけで原発40基分」と比べれば、全国で原発12基分は少ないように見えるが、それでも国内電力需要の8%をまかなえる計算になる。決して小さくないだろう。また、FITの制度設計、技術革新や補助金制度によっては、上乗せも期待できる。

 洋上風力発電の導入ポテンシャルは「未知数」

 さらに、以上は陸上風力発電に限った話である。導入ポテンシャルが陸上風力の5.7倍もあるとされる洋上風力発電はカウントしていない。洋上風力ならば、陸上風力に適さない東京電力管内でも導入が見込める。

 斉藤氏は「欧州では導入が始まった洋上風力だが、国内ではまだ実証実験の段階。技術、ノウハウが蓄積されておらず、制度も未整備なので、現実的な導入ポテンシャルは未知なところがある」と話す。実際、導入ポテンシャル調査でも、FIT単独シナリオでは3GWと小さく、技術革新、補助金を伴って大きな導入ポテンシャルとなる。逆に言えば、技術革新の余地が大きく、政策次第とも言える。洋上風力については、シリーズの別の回で取り上げる。

 風車は原始的なイメージもあるが、「中身は2万点の部品で構成され、日本が得意とする機械部品の集積」(斉藤氏)という。エネルギー産業、機械産業の面でも大いなる可能性を秘めた風力発電は注目に値するだろう。
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タグ:風力 発電 原発

原発は、隠れた問題だらけ…!? [エネルギー]

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http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20120130/226656/?mlp

世界初、原発の見えなかったコストを解明する
日本のエネルギー政策、ゼロから出発するための第一歩
伊原 智人
2012年2月2日(木)

 2011年10月3日、古川元久・国家戦略担当大臣を議長とするエネルギー・環境会議は、「コスト等検証委員会」を設置することを決定した。これは、東日本大震災と東京電力福島第1原子力発電所の事故を踏まえて、ゼロから見直すことになったエネルギー環境戦略を検討するための第一歩であった。特に、従来、安いとされてきた原発のコストなどを徹底的に検証することは、聖域なき検証の大前提になるという認識に基づくものであった。

 これから、5回にわたり、このコスト等検証委員会が、2011年12月19日にまとめた報告書のポイントについて、当該委員会の事務局メンバーが解説する。但し、解説の内容については、各執筆者個人の文責によるものである。

 第1回は、原子力発電のコストについてである。

 原子力発電については、原発事故の前から、国家が何らかのサポートをしないと成り立たないと言われていた。すなわち、電気料金には表れていないが、国家の負担として、国民が別の形(例えば税金)で負担している「隠れたコスト」があるのではないかという指摘である。

 今回の委員会の委員の一人である大島堅一・立命館大学教授は、原発の発電コストを考える際に、国が負担している原発の立地自治体に支払われる立地法交付金なども入れるべきとの主張を展開していた。しかし、これまでの政府や国際機関が行ってきた原発の発電コストの試算において、こうした「社会的なコスト」といわれるコストを勘案した例は、世界的にみても見当たらない。

 過去の試算より5割以上高い

 今回の委員会の報告書では、こうした社会的なコストも含めて試算している。具体的には、原発のコストとしては、(1)原発の建設費用などの資本費、(2)ウラン燃料などの燃料費、(3)人件費などの運転管理費といった一般的に発電原価といわれるコストに加えて、(4)事故リスクのコスト、(5)政策経費も含めて試算した。

 その結果は、下限が約9円/キロワット時(注1)であり、上限については示せないということであった。2004年、電気事業連合会が経済産業省の総合エネルギー調査会・電気事業分科会に提出した試算などに基づき、これまでよく言われていた5~6円/キロワット時程度という水準から考えると、下限でも5割以上は高いという試算結果である。

 なぜ、このような結果になったのか。図1をご覧いただきたい。

図1.jpg

 2004年の試算と比べて、今回の試算で、どのようなコストが上乗せされているかが示されている。まず、建設費や人件費などの上昇で資本費や運転管理費などが増加した分と、東日本大震災後に示された追加的な安全対策のための費用を勘案して1.4円/キロワット時が増額となる。これに、政策経費ということで、電力会社ではなく、国が支払っている原発関連の費用も、国民が負担しているという意味では発電コストとして計上して、年間3200億円で、1.1円/キロワット時と算出された。

(注1)今回の試算は、それぞれの電源ごとに、2010年に稼働を開始したと想定したモデルプラントを前提に、そのモデルプラントが一定の条件で稼働した場合の発電コストを試算。そのため、稼動年数、設備利用率、割引率などの条件により、発電コストは異なる。原発では、稼動年数40年、設備利用率70%、割引率3%の場合、下限が8.9円/キロワット時。

 さらに、もう1つの社会的コストとして、議論となったのが、事故リスクのコストである。事故リスクのコストとは、今回の事故を受けて、原発について、いったん事故が起こると損害賠償や追加的な廃炉費用など、膨大なコストが発生する。この発生するかもしれないコストについて、何らかの対応を予め取っておく必要があるが、そのためのコストはいくらなのかという問題である。

 この事故リスクのコストについては、委員会においても、特に活発な議論があった議題であった。この事故リスクのコストを試算するにあたり、事故が起きた後の廃炉の費用や、損害賠償費用を算出する前提となる原発事故の影響などについては、技術的な知見が必要であろうという判断で、原子力委員会に協力を依頼することとした。具体的には、原子力委員会で、いったん試算していただいたものをコスト等検証委員会にご報告いただき、コスト等検証委員会でそれらを検証させていただくということとした。

 11月15日、原子力委員会の鈴木達治郎委員長代理(原子力発電・核燃料サイクル技術等検討小委員会座長)から、原子力委員会での試算結果をご報告いただいたが、その際には、大きく2つの方法が示された。1つは、損害想定額に事故の発生確率を掛けた「期待損害値」といわれるものであり、もう1つが、損害想定額を、原発事業者全員で準備するという「相互扶助方式」といわれるものである。

 まず、前者について、議論がなされたが、コスト等検証委員会では、4人の委員がそろって、前者の期待損害値については、不十分であるとの指摘した。その際の趣旨は、以下の通りである。

 原発事故の保険料は算定できない

 本来、事故リスクに備えるためには保険が一般的であり、そのための保険料をコストとして見込むのが適当である。その保険料を算出する際、とても低い確率だが、極めて大きな損害が発生するような場合は、期待損害値だけではなく、追加的なコスト(リスクプレミアム)を見込むべきである。

 さらに、今回の福島原発事故のような原発のシビアアクシデントのように、よりまれで深刻な被害が発生する場合は、リスクプレミアムを計上することも困難ということで、このような観点から保険料を算出できないという結論になり、そうであれば、期待損害値を事故リスクコストとすることはミスリーディングになりかねないということで、採用しないこととなった。

 そこで、もう一方の「相互扶助方式」を検討した。相互扶助方式は、シビアアクシデントが生じた場合の損害を、原発事業者全員で負担しようという考え方によったものであり、損害想定額を、一定の期間で積み立てると仮定した場合の積立金を、事故リスクコストとしてカウントしてはどうかという考え方である。議論の結果、疑似的な保険制度として、このような考え方で、事故リスクコストを出すことはありうるということになり、この委員会では、損害想定額を40年間で積み立てるという場合の費用を事故リスクコストとすることになった。

 なお、損害想定額については、図2をご覧いただきたい。原発のシビアアクシデントの際の損害想定額を算出するにあたり、過去の例としては、世界でも、スリーマイル島、チェルノブイリ、福島しかなく、今回の試算にあたっては、福島を参考に算出することとした。
 原子力委員会では、東京電力に関する財務・経営調査委員会が推計した追加的な廃炉費用と損害賠償額を基に試算した(図2の紫色部分)。コスト等検証委員会では、それに加えて、行政経費、除染費用の一部、損害賠償の基準の変更による増額分などを追加して算出した。

 しかしながら、ここで、(1)含まれていない費用があること(図2のオレンジ色部分)、(2)今回の相互扶助方式を一種の保険として捉えた場合、事業者は十分な余裕をもって事故リスクに備えるべきとの考え方から、これはあくまでも下限値であるとされた。

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 上記の議論の結果、原発の事故リスクのコストは、割引率3%、設備利用率70%、稼動年数40年の場合、0.5円/キロワット時が下限であり、上限は示せないこととなった。

 使用済み核燃料の再処理コストは?

 原発のコストについては、しばしば、バックエンドの費用はどうなっているのかという質問を受ける。原発のバックエンド費用とは、発電した後に出てくる使用済みの核燃料の処理にかかる費用のことである。

 日本では、バックエンドについては、核燃料サイクルということで、再処理という工程を経て、MOX(ウラン・プルトニウム混合酸化物)燃料という形にして、原発でまた使うという前提で試算されてきた。今回は、この点についても、事故リスクのコストと一緒に、原子力委員会に協力を依頼したが、その際に、様々な方策の試算をお願いした。

 その結果として、原子力委員会からは、大きくわけて3つの方策を前提とした試算結果が提出された。1つが使用済み核燃料全てをすぐに再処理して、それでできたMOX燃料をまた発電に使うというサイクルを前提とした「再処理モデル」(図3)、もう1つが、「直接処分モデル」といわれる方策で、使用済核燃料全てを地層処分という形で、一定期間、地上で冷却した上で、地下深くにそのまま埋設するという方法である(図4)。3つ目は、半分は20年貯蔵後、再処理し、残りの半分は50年貯蔵後、再処理をするという「現状モデル」である(図5)。

 それぞれのコストを比較した結論としては、再処理モデルは、直接処分モデルよりも、約1円/キロワット時高く、現状モデルはその中間的に位置するというものであった。ただし、この試算は、モデルプラントの試算であり、かつ、現在の日本の実態に必ずしも合致していない前提の部分もあることから、今後、日本におけるバックエンドの選択肢の議論がなされる場合には、我が国の現在の状況を前提とした具体的なシナリオをもとに試算がなされるものと考えられる。

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 今回、原発のコストについて、世界的にも前例がない事故リスクのコストや政策経費という社会的コストを加味した形で試算をしてみて、他の電源と比べても、やはりその試算の難しさを認識せざるを得なかった。特に事故リスクのコストは上限が示せなかったように不確定要素が多い。ただし、少なくとも、試算のフレームワークを示せたことは意味があり、今後、さらなる検証を可能にしたことは評価されるべきものと考えている。

(次回に続く)
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原発推進(維持)論者は、小規模水力発電をなぜ嫌うのか…!? [エネルギー]

 過去記事(『太陽光発電はもっと高いよ…!?』)から転記しました。

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http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2011/08/26/20110826ddm008020154000c.html
再生エネルギー・現場からの報告:/4止
小水力発電 ネックは高額初期費用

 ◇供給安定、急流多い日本で潜在力

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 湧き水が豊富な長野県茅野市の八ケ岳山麓(さんろく)。年中ほぼ一定の水量が小川となって別荘地を流れ、下流では農業用水にも使われる。丸紅は昨年6月、この小川の途中に3億円かけて小水力発電施設をつくった。
 設備は広さ70平方メートルの建屋に水車が一つ。上流で取水した毎秒0・5立方メートルの水を、65メートル下にある水車に落として、最大出力260キロワット(500世帯分)の電気をつくる。発電所のそばで温泉旅館を営む荻原高年さんは「環境への負荷が少ないことが観光客にアピールできる」と歓迎する。
 00年に参入した丸紅は茅野市など計六つの小水力発電施設を運営。大西英一電力事業チーム長は「山が急峻(きゅうしゅん)で流れの急な川が多い日本は潜在力が大きい」と話し、20年までに全国30カ所での事業化を目指す。

     ◇

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農業用水に使われている八ヶ岳山ろくの湧き水の一部を発電用に取水する。湧水量は年間を通して一定で、発電に適している=長野県茅野市で

 農業用水に使われている八ヶ岳山ろくの湧き水の一部を発電用に取水する。湧水量は年間を通して一定で、発電に適している=長野県茅野市で 「東京ディズニーランド(TDL)や家庭で使う水は電気も起こしています」。千葉県水道局の妙典給水場(市川市)は08年から、市川・浦安市内の上水道を利用した水力発電を始めた。TDLや家庭に送る水道水の水圧を使って水車を回し発電する仕組みで、得られた電力(年128万キロワット時)を自家消費している。

 発電施設は東京電力子会社の東京発電が運営。小水力発電よりさらに小さい妙典給水場のような発電施設は「マイクロ水力」と呼ばれる。設備投資額は主流の出力100キロワット級で4000万円程度。電力会社への余剰電力の売電価格は現在1キロワット時当たり8円程度で、投資回収には10~15年かかる。

     ◇

 普及のハードルは発電量が少ない割に、施設整備などでの数千万~数億円の高額な初期費用。3~5年かかるケースもある水利権の取得手続きの煩雑さも参入の妨げだ。東京発電は「来年7月からの再生可能エネルギー固定価格買い取り法(再生エネ法)施行で売電価格が上がれば、投資資金の調達や回収がしやすくなる」と期待する。ただ、再生エネ法による固定価格買い取り制度導入と引き換えに、初期投資の3分の1を補助する国の支援は打ち切られる。
 小水力発電は拠点を増やさないともうからない「薄利多売」(丸紅)だけに、参入に二の足を踏む企業も。ただ、地域の集落が自前で電気を賄う「地産地消の電源」は魅力だ。

     ◇

 日本の再生エネの年間発電量は全体の約10%(国際エネルギー機関調べ、08年)だが、大規模水力を除けば、3%以下。菅直人首相は再生エネの発電量を20年代に全体の20%に引き上げる方針を示したが、買い取り価格を高めれば、その分は電気代に転嫁され、家計や企業を苦しめる副作用がある。国民負担を抑えつつ、再生エネをどう普及させるか。規制緩和も含めたきめ細かな戦略が必要だ。【寺田剛】=おわり

 ◇小水力発電

 農業用水や水道施設などに設置され、高低差による水の流れを利用して水車を回し、発電機を動かす。発電規模は小さいが、天候次第で発電量が大きく落ち込む太陽光や風力に比べて、安定的な電力供給が可能。
 経済産業省の調査によると、水力発電に適した一般河川は全国で約2700地点あり、大半が小水力発電向け。これらの河川全部に水力発電設備を設ければ、発電容量は計1200万キロワットに達し、原発10基分以上に相当するという。

毎日新聞 2011年8月26日 東京朝刊
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